犬種と健康

犬の遺伝病一覧|代表的な病気と犬種別の傾向

内容確認日 2026-09-01うちのこ家系図 読みもの

犬の遺伝性疾患の全体像を調べる飼い主。犬種ごとの傾向を知り、家系の記録につなげる
目次
  1. 1犬の遺伝病とは|先天性との違い
  2. 2骨・関節の病気
  3. 3目の病気
  4. 4心臓の病気
  5. 5神経・脊椎の病気
  6. 6その他・報告数の少ない遺伝性疾患
  7. 7犬種と好発疾患の傾向|わかっている範囲で
  8. 8遺伝子検査でできること
  9. 9家系で備える|わかる範囲の情報を残しておく
  10. 10よくある質問
  11. 11まとめ|犬種の傾向を知り、家系で備える

「うちの子の犬種は、遺伝性の病気にかかりやすいのだろうか」——これから犬を迎える方も、すでに一緒に暮らしている方も、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。

犬の遺伝性疾患には、骨や関節に関わるもの、目に関わるもの、心臓に関わるもの、神経や脊椎に関わるものまで、実にさまざまな種類があります。この記事では、その全体像を一次情報をもとに整理しました。個々の病気の詳しい解説は、犬種別・疾患別の専用記事に譲り、この記事では「どんな種類の病気があり、どう調べればいいか」の地図を示します。

犬の遺伝病とは|先天性との違い

要点: 遺伝性疾患とは、遺伝子の変異が親から子へ受け継がれることで起こる病気です。生まれつきの病気(先天性疾患)の中には、遺伝によるものと、そうでないものの両方が含まれます。

JKC(ジャパンケネルクラブ)の解説では、DNA配列の変異(遺伝的変異)が遺伝子疾患の原因になることがあり、両親のDNAが子へ引き継がれる仕組みの中で、その変異も親から子へと受け継がれていくと説明されています(JKC「遺伝子疾患について考えよう」・確認日 2026-09-01)。

ここで整理しておきたいのが、「先天性」と「遺伝性」の違いです。「先天性」は生まれつき見られる状態全般を指す言葉で、遺伝が原因のものだけでなく、妊娠中の環境要因などによって生じるものも含まれます。一方「遺伝性」は、原因となる遺伝子が親から子へ受け継がれることが分かっている、より狭い範囲を指します。すべての先天性の病気が遺伝性というわけではありません。

遺伝子がどのように親から子へ伝わり、なぜ健康な両親から病気の子が生まれることがあるのか——その仕組みの基本は、犬の遺伝のしくみ入門|キャリア・優性劣性をやさしく図解でやさしく解説しています。この記事では、その仕組みを踏まえたうえで、体のどこに関わる病気がどんな種類として報告されているか、全体像を見ていきます。

骨・関節の病気

要点: 骨や関節に関わる遺伝性疾患には、膝のお皿がずれる「膝蓋骨脱臼(パテラ)」、股関節の形成に関わる「股関節形成不全」などがあります。小型犬・大型犬それぞれで報告される傾向が異なるとされています。

骨・関節に関わる遺伝性疾患の代表格が、膝のお皿(膝蓋骨)がずれる「膝蓋骨脱臼(パテラ)」です。特に小型犬で報告されることが多いとされ、グレードという重症度の考え方や、犬種別の傾向、暮らし方の工夫については、犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)|犬種別に家系で発見で詳しく解説しています。

もうひとつ、大型犬を中心に報告される「股関節形成不全(HD)」「肘関節形成不全(ED)」も、骨・関節の遺伝性疾患として知られています。JKCが公開している「発生リスクが高いと考えられている犬種リスト」では、アイリッシュ・ウルフハウンドやゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード・ドッグなど、約50犬種がリストに挙げられています(JKC「発生リスクが高いと考えられている犬種リスト」・確認日 2026-09-01)。リストの名前どおり「発生リスクが高いと考えられている」犬種を挙げたものにすぎず、掲載犬種なら必ず発症する、未掲載なら起こらない、と読める性質のものではありません。ゴールデン・レトリーバーにおける具体的な報告はゴールデンレトリーバーの遺伝病・かかりやすい病気と家系での備えで詳しく解説しています。

目の病気

要点: 目に関わる遺伝性疾患には、網膜がゆっくりと働きを失っていく「進行性網膜萎縮症(PRA)」や、遺伝性の白内障などがあります。犬種によって報告される病気の傾向が異なるとされています。

目の遺伝性疾患としてよく知られているのが、「進行性網膜萎縮症(PRA)」です。網膜の細胞がゆっくりと機能を失っていく病気で、進行の速さや気づかれ方には幅があるとされています。遺伝の仕組みや犬種別の傾向、見えにくさと暮らす工夫については、犬の進行性網膜萎縮症|犬種別・家系で早期発見で詳しく解説しています。

このほか、若いうちから水晶体が白く濁る「若年性白内障」、眼圧が高くなる「緑内障」なども、一部の犬種で遺伝性のものが報告されています。柴犬における具体例は柴犬の遺伝病5種|GM1・皮膚・目と家系で紹介しています。

心臓の病気

要点: 心臓に関わる遺伝性疾患の代表例が「僧帽弁閉鎖不全症」です。小型犬でとくに報告されることが多いとされ、犬種別の詳しい情報は各犬種記事に譲ります。

心臓の病気の中で、遺伝的な関わりが指摘されているものの代表が「僧帽弁閉鎖不全症」です。心臓の弁がうまく閉じなくなることで、血液の流れに影響が出るとされる病気で、小型犬でとくに報告されることが多いとされています。病気の成り立ちと、どの犬種で報告が多いのか、家系図にどう残しておくかは犬の僧帽弁閉鎖不全症|好発犬種と家系での備えにまとめてあります。マルチーズにおける具体的な報告や、心臓の病気という言葉の意味については、マルチーズの遺伝病|心臓・ひざと家系での備えで詳しく整理しています。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルにおける具体的な報告はキャバリアの遺伝病・かかりやすい病気と家系での備えで整理しています。

神経・脊椎の病気

要点: 神経・脊椎に関わる遺伝性疾患の代表例が「椎間板ヘルニア」です。ダックスフンドをはじめとした「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれるグループで、とくに報告が多いとされています。

脊椎(背骨)の間でクッションの役割をする椎間板に関わる病気が、「椎間板ヘルニア」です。体が長く脚の短い犬種を中心に「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれるグループがあり、このグループに属する犬種で報告が多いとされています。犬種を横断した仕組みの解説は犬の椎間板ヘルニア|犬種別リスクと家系で早期発見、ミニチュアダックスフンドにおける具体的な報告はミニチュアダックスの椎間板ヘルニア|遺伝と家系で、それぞれ詳しく解説しています。

その他・報告数の少ない遺伝性疾患

要点: ここまで紹介した病気のほかにも、代謝や酵素の働きに関わる、報告数の少ない遺伝性疾患があります。個々の病気を単独で詳しく解説するのではなく、この一覧の中で紹介するにとどめます。

体のさまざまな働きに関わる酵素や代謝の仕組みに、遺伝子の変異が影響する病気も報告されています。たとえば柴犬で報告されている「GM1ガングリオシドーシス」は、体の中で特定の脂質を分解する酵素の働きに関わる遺伝性疾患のひとつです。研究の現在地や遺伝子検査という備えについては、柴犬の遺伝病5種|GM1・皮膚・目と家系で詳しく解説しています。

呼吸に関わる病気としては、気管がつぶれて空気の通り道が狭くなる「気管虚脱」も、小型犬種を中心に報告数の多い体質のひとつです。ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズなど複数の犬種で報告されており、原因の仕組み・好発犬種の全体像・家系での備え方は犬の気管虚脱とは|なりやすい犬種と家系での備えで詳しく解説しています。

こうした報告数の少ない病気は、犬種によって見られる病気が異なり、まだ研究が続いているものも少なくありません。この記事では一覧としての紹介にとどめ、個々の病気を掘り下げる専用記事は、今後の状況を見ながら判断していきます。気になる症状がある場合は、自己判断せず、かかりつけの獣医師にご相談ください。

犬種と好発疾患の傾向|わかっている範囲で

要点: 犬種によって、報告される遺伝性疾患の傾向には違いがあるとされています。ただし、これは「その犬種なら必ず発症する」という意味ではなく、あくまで報告の傾向です。

犬種ごとにどんな遺伝性疾患が報告されやすいとされているか、現時点で当サイトの犬種別記事が扱っている範囲を一覧にしました。

犬種報告されやすいとされる主な病気(傾向)詳しく
トイプードル進行性網膜萎縮症・膝蓋骨脱臼・てんかん など7種記事へ
チワワ水頭症・膝蓋骨脱臼記事へ
ミニチュアダックスフンド椎間板ヘルニア記事へ
柴犬GM1ガングリオシドーシス・アトピー性皮膚炎・緑内障・若年性白内障・進行性網膜萎縮症記事へ
ミニチュアシュナウザー高脂血症・尿路結石・目の病気記事へ
ポメラニアン気管虚脱・脱毛症X・膝蓋骨脱臼記事へ
マルチーズ僧帽弁閉鎖不全症・膝蓋骨脱臼・涙やけ記事へ
ヨークシャーテリア気管虚脱・門脈体循環シャント・レッグ・カルベ・ペルテス病記事へ
フレンチブルドッグ短頭種特有の呼吸・背骨の体質記事へ
シーズー目・皮膚・腎異形成記事へ
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル僧帽弁閉鎖不全症・脊髄空洞症(キアリ様奇形)・目や膝の病気記事へ
ゴールデン・レトリーバー股関節形成不全・進行性網膜萎縮症(GR-PRA)・腫瘍など大型犬で報告が多い体質記事へ
ラブラドールレトリーバー股関節形成不全など大型犬で報告が多い体質(病気の詳しい記事は今後)ハブ記事へ
コーギー椎間板ヘルニア(胴長の体型に関連するFGF4遺伝子)など(病気の詳しい記事は今後)ハブ記事へ
パピヨン進行性網膜萎縮症・膝蓋骨脱臼など(病気の詳しい記事は今後)ハブ記事へ

この表は、あくまで「報告されやすいとされる傾向」をまとめたものです。表にない犬種でも遺伝性疾患が報告されていないわけではなく、また表にある犬種でも、すべての個体が発症するわけではありません。埼玉県獣医師会の解説記事によれば、シドニー大学が運営するデータベース「OMIA」において、遺伝子異常が明らかになっている犬の疾患や形質(毛色などの特徴)は211にのぼり、そのうち約50の病気については遺伝子診断が可能とされています(公益社団法人埼玉県獣医師会「犬の遺伝性疾患について」・確認日 2026-09-01)。同記事では、犬の遺伝性疾患の報告が国内でも少なくないことに触れ、計画性のある繁殖の大切さが指摘されています(確認日 2026-09-01)。うちの子の犬種にどんな傾向が報告されているか知っておくことは、日々の観察や、動物病院での相談を具体的にする手がかりになります。表の気管虚脱・僧帽弁閉鎖不全症のように複数犬種にまたがって報告される病気については、犬種横断の解説記事(犬の気管虚脱とは犬の僧帽弁閉鎖不全症)もあわせてご覧ください。

遺伝子検査でできること

要点: 遺伝子検査を受けると、特定の病気に関わるとされる遺伝子変異の有無を調べられる場合があります。ただし検査でわかることには限りがあり、万能な安心材料ではありません。

「うちの子の遺伝性疾患のリスクを、もっと具体的に知りたい」と思ったとき、選択肢のひとつになるのが遺伝子検査です。検査の種類・費用の目安・「キャリア(保因)」という考え方・受ける前に知っておきたいことまで、犬の遺伝子検査ガイド|種類・費用・何がわかるかで詳しく解説しています。検査を受けるかどうかにかかわらず、まずはうちの子の家系を記録に残しておくことが、今日からできる備えです。

家系で備える|わかる範囲の情報を残しておく

要点: 遺伝性疾患は、うちの子1頭だけでなく、両親・兄弟犬にもつながる情報です。わかる範囲の家系情報を記録しておくことが、将来の手がかりになることがあります。

犬の遺伝性疾患は、うちの子1頭だけの話にとどまりません。原因となる遺伝子は、両親から受け継いだものであり、兄弟犬にも共通している可能性があります。だからこそ、両親犬や兄弟犬にどんな傾向があったか、わかる範囲で記録しておくことが、うちの子自身を理解する手がかりになります。

うちのこ家系図では、うちの子の情報だけでなく、わかる範囲で両親や兄弟犬の情報も記録できます。血統書がある子は、撮った写真の読み取り結果を確認して保存すれば、それが家系図の土台になります。健康手帳には、気になる症状や動物病院での相談内容もあわせて記録できるので、犬種ごとの傾向を知ったうえで、日々の様子を残していく習慣づくりに役立ちます。

よくある質問

Q. 「うちの子の犬種は遺伝病が多い」と聞いて不安です。どう受け止めればいいですか?

犬種ごとに報告される遺伝性疾患の傾向は、あくまで「その犬種で報告されやすいとされている」という統計的な傾向であり、必ず発症するという意味ではありません。過度に不安になるより、犬種の傾向を知ったうえで、日々の様子を観察し、気になることがあれば早めに動物病院に相談する、という向き合い方が現実的です。

Q. 両親や兄弟の情報は、どこまで参考になりますか?

遺伝性疾患の原因となる遺伝子は、親から子へ受け継がれるため、両親や兄弟犬の健康状態は、うちの子を理解する手がかりのひとつになり得ます。ただし、キャリア(原因遺伝子を1つだけ持ち発症しない状態)のように、親自身には症状が出ない場合もあるため、「両親が健康だから安心」とは言い切れない点にも注意が必要です。詳しい仕組みは犬の遺伝のしくみ入門で解説しています。

Q. ミックス犬は遺伝病のリスクが低いのですか?

一概にはいえません。両親双方の犬種に共通する原因遺伝子があれば、ミックス犬でもリスクは残ると考えられています。詳しくはミックス犬は病気に強い?遺伝病リスクの実際で解説しています。

Q. 遺伝子検査を受ければ、遺伝性疾患を防げますか?

いいえ、検査を受けたこと自体が病気を防ぐわけではありません。検査でわかるのは、あくまで調べた範囲の遺伝的な傾向です。検査結果は自己判断の材料にせず、獣医師と共有しながら向き合うことをおすすめします。詳しくは犬の遺伝子検査ガイドをご覧ください。

まとめ|犬種の傾向を知り、家系で備える

  • 遺伝性疾患は、遺伝子の変異が親から子へ受け継がれることで起こる。先天性の病気すべてが遺伝性というわけではない
  • 骨・関節、目、心臓、神経・脊椎など、体のどこに関わるかで、さまざまな種類の遺伝性疾患が報告されている
  • 犬種によって報告されやすい病気の傾向は異なるとされるが、あくまで統計的な傾向であり断定はできない
  • 遺伝子検査は選択肢のひとつ。検査でわかることには限りがある
  • 両親・兄弟犬の情報は、うちの子を理解する手がかりになり得る。わかる範囲を家系として記録しておくことが備えになる

うちの子の犬種にどんな傾向が報告されているか知ることは、不安を大きくするためではなく、日々の暮らしと向き合うための地図です。わかる範囲の家系情報を、今日から記録に残しておきませんか。


本記事は参考情報です。うちの子の症状・体質については、自己判断せず、かかりつけの獣医師にご相談ください。 記事中の情報は2026年9月1日時点で各公式サイトを確認したものです。

出典・参考

この記事について

内容確認日: 2026-09-01(この日時点の一次情報にもとづいています)

本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。