猫のはなし

猫の遺伝病一覧|猫種ごとに報告が多いとされる病気と家系での備え

内容確認日 2026-09-02うちのこ家系図 読みもの

猫の遺伝性疾患の全体像を調べる飼い主。猫種ごとの傾向を知り、家系の記録につなげる
目次
  1. 1猫の遺伝病とは|先天性との違い
  2. 2心臓の病気|肥大型心筋症
  3. 3腎臓の病気|多発性嚢胞腎
  4. 4骨・関節の病気|骨軟骨異形成症
  5. 5目・血液・代謝など、報告数の少ない遺伝性疾患
  6. 6毛色に関連する遺伝
  7. 7猫種と好発疾患の傾向|わかっている範囲で
  8. 8雑種猫の場合
  9. 9遺伝子検査でできること
  10. 10家系で備える|わかる範囲の情報を残しておく
  11. 11よくある質問
  12. 12まとめ

「うちの子の猫種は、遺伝性の病気にかかりやすいのだろうか」——これから猫を迎える方も、すでに一緒に暮らしている方も、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。

猫の遺伝性疾患には、心臓に関わるもの、腎臓に関わるもの、骨や関節に関わるものまで、さまざまな種類があります。この記事では、その全体像を埼玉県獣医師会・東京都動物愛護相談センターの情報をもとに整理しました。個々の病気の詳しい解説は、疾患別・猫種別の専用記事に譲り、この記事では「どんな種類の病気があり、どう調べればいいか」の地図を示します。

猫の遺伝病とは|先天性との違い

要点: 遺伝性疾患とは、親から受け継いだ遺伝情報が何らかのきっかけで傷つくことで起こる病気です。猫では「品種好発性疾患」とも呼ばれ、純血種で報告されることの多い病気の一群を指します。

東京都動物愛護相談センターの解説では、猫の遺伝性疾患について「親から受け継いだ遺伝情報が何らかのきっかけで傷つくことでかかる遺伝性の病気」であり、これを「品種好発性疾患」と呼ぶと説明されています(東京都動物愛護相談センター「あなたに合った猫を迎えよう〜猫種の特徴と遺伝性疾患編」・確認日 2026-09-02)。

埼玉県獣医師会の解説でも、「純血種は品種特有の遺伝性疾患を持っていることがあります」としたうえで、「猫の遺伝性疾患は犬ほど多くはありませんが、現在300種類以上が知られています」と紹介されています(公益社団法人埼玉県獣医師会「猫の遺伝性疾患について」・確認日 2026-09-02)。同記事では、こうした病気の背景に交配のあり方があることに触れ、計画性のある繁殖の大切さを指摘したうえで、近年はいくつかの遺伝性疾患について遺伝子検査が利用できるようになったことも紹介されています(同上・確認日 2026-09-02)。

心臓の病気|肥大型心筋症

要点: 心臓の病気の中で、遺伝的な関わりが指摘されているものの代表が「肥大型心筋症(HCM)」です。メインクーン・ラグドールなど、複数の猫種で報告されています。

心臓の壁が厚くなり、血液が送られにくくなる「肥大型心筋症」は、猫の遺伝性疾患としてよく知られている病気のひとつです。東京都動物愛護相談センターの資料にはメインクーン・ラグドールの名が挙がっており、埼玉県獣医師会のランキング表を見ると、この2猫種のほかにもアメリカンショートヘア・ブリティッシュショートヘア・スコティッシュフォールド・マンチカンといった猫種で報告例があることがわかります(確認日 2026-09-02)。病気の仕組み、遺伝子検査でわかること、家系での備え方については猫の肥大型心筋症(HCM)|報告が多いとされる猫種と家系での備えで詳しく解説しています。

腎臓の病気|多発性嚢胞腎

要点: 腎臓に多数の嚢胞ができる「多発性嚢胞腎(PKD)」も、猫の代表的な遺伝性疾患のひとつです。ペルシャ系の猫種を中心に報告されています。

腎臓の組織の中に、液体で満たされた嚢胞が多数できる「多発性嚢胞腎」も、猫の遺伝性疾患としてよく知られています。東京都の資料ではペルシャ・スコティッシュフォールドが、埼玉県獣医師会の資料ではこの2猫種に加えてアメリカンショートヘア・ブリティッシュショートヘア・マンチカンが挙げられています(確認日 2026-09-02)。仕組みや遺伝子検査でわかること、家系での備え方は猫の多発性嚢胞腎(PKD)|報告が多いとされる猫種と遺伝子検査でわかることで詳しく解説しています。なお、シニア期に多い「慢性腎臓病」は、多発性嚢胞腎とは別の病気です。慢性腎臓病については今後、専用の記事で扱う予定です。

骨・関節の病気|骨軟骨異形成症

要点: 骨・関節に関わる遺伝性疾患の代表例が「骨軟骨異形成症」です。折れ耳で知られるスコティッシュフォールドをはじめ、複数の猫種で報告されています。

関節を保護する軟骨がうまく形成されない「骨軟骨異形成症」も、猫の遺伝性疾患のひとつです。埼玉県獣医師会の資料では、スコティッシュフォールド・マンチカンが、報告が多いとされる猫種として挙げられています(確認日 2026-09-02)。折れ耳という特徴との関係、この病気の意味については、「スコ座りの本当の意味|骨軟骨異形成症と折れ耳の遺伝を正しく知る」(同バッチで公開予定)で詳しく解説する予定です。

目・血液・代謝など、報告数の少ない遺伝性疾患

要点: 心臓・腎臓・骨関節ほど広く知られていない、代謝や血液の働きに関わる遺伝性疾患もあります。研究がまだ発展途上のものが多く、この記事では一覧としての紹介にとどめます。

埼玉県獣医師会の資料では、ノルウェージャンフォレストキャットで報告される「グリコーゲン貯蔵病(糖原病)」「ピルビン酸キナーゼ欠損症」、ラグドールで報告される「進行性網膜萎縮症」「ピルビン酸キナーゼ欠損症」も、猫種ごとの遺伝性疾患として紹介されています(確認日 2026-09-02)。ピルビン酸キナーゼ欠損症は、複数の猫種にまたがって報告されている点が特徴です。

猫の遺伝性疾患は、心臓や腎臓のように既に多くのことがわかっている病気ばかりではなく、こうした代謝・血液系の病気のように、報告例そのものが少なく研究が発展途上のものも含まれます。当サイトでは今のところ、こうした病気を単独の専用記事として深掘りするより、この一覧の中で存在を紹介するにとどめています。将来、有力な一次資料が見つかった段階で、専用記事化を検討していく予定です。うちの子にあてはまりそうな症状があるときは、この一覧を参考にしつつも、最終的な判断はかかりつけの獣医師に委ねてください。

毛色に関連する遺伝

要点: 毛色そのものにも、遺伝の仕組みが関わっています。白猫と聴こえ、三毛猫のオス、柄の種類など、毛色に関連するテーマは専用記事で扱っています。

白い被毛の猫で先天性の難聴が報告されることがある点は白猫にオッドアイが多い理由|毛色と難聴の関係、三毛猫にオスが生まれにくい理由は三毛猫のオスが珍しい理由|毛色と性染色体の仕組み、毛色・柄の種類そのものについては猫の柄・模様の種類図鑑|名前の由来と毛色遺伝のしくみで、それぞれ詳しく解説しています。

猫種と好発疾患の傾向|わかっている範囲で

要点: 猫種によって、報告される遺伝性疾患の傾向には違いがあるとされています。ただし、これは「その猫種なら必ず発症する」という意味ではなく、あくまで報告の傾向です。

猫種ごとにどんな遺伝性疾患が報告されやすいとされているか、埼玉県獣医師会・東京都動物愛護相談センターの資料をもとに一覧にしました。

猫種報告されやすいとされる主な病気(傾向)詳しく
スコティッシュフォールド骨軟骨異形成症・多発性嚢胞腎・肥大型心筋症記事へ
マンチカン骨軟骨異形成症・多発性嚢胞腎・肥大型心筋症記事へ
メインクーン肥大型心筋症今後の専用記事で紹介予定
ラグドール肥大型心筋症・進行性網膜萎縮症・ピルビン酸キナーゼ欠損症今後の専用記事で紹介予定
ペルシャ多発性嚢胞腎今後の専用記事で紹介予定
アメリカンショートヘア肥大型心筋症・多発性嚢胞腎今後の専用記事で紹介予定
ブリティッシュショートヘア肥大型心筋症・多発性嚢胞腎今後の専用記事で紹介予定
ノルウェージャンフォレストキャットグリコーゲン貯蔵病・ピルビン酸キナーゼ欠損症今後の専用記事で紹介予定

この表は、あくまで「報告されやすいとされる傾向」をまとめたものです。表にない猫種でも遺伝性疾患が報告されていないわけではなく、また表にある猫種でも、すべての個体が発症するわけではありません。この表を眺めるときは「うちの子の猫種はどこにあるか」だけでなく、「表にない猫種でも安心できるとは限らない」という点もあわせて意識してみてください。スコティッシュフォールド・マンチカンにおける具体的な報告は、それぞれ「スコティッシュフォールドの性格と特徴|折れ耳・毛色とかかりやすい病気」・「マンチカンの性格と特徴|短い脚の理由とかかりやすい病気」(いずれも同バッチで公開予定。上表からリンクできます)で詳しく紹介する予定です。

雑種猫の場合

要点: 雑種猫(ミックス)であっても、育った環境や体の特徴が病気に関わっている例があるとされています。「純血種でなければ大丈夫」というわけではありません。

東京都動物愛護相談センターの資料では、「ミックスであってもそれまでの環境や体の特徴による要因が、疾患に関わっている例もあります」と紹介されています(確認日 2026-09-02)。純血種ほど猫種ごとの傾向がはっきり報告されているわけではありませんが、雑種猫だからといって遺伝性の要因と無縁というわけではありません。雑種猫の場合の考え方について詳しくは雑種猫(ミックス猫)の遺伝と健康|柄の由来から解説で解説しています。

遺伝子検査でできること

要点: いくつかの遺伝性疾患は、遺伝子検査で変異の有無を調べられるようになってきています。とはいえ検査は万能ではなく、何がわかり何がわからないかを理解したうえで利用するものです。

埼玉県獣医師会は、遺伝子検査を積極的に取り入れていくことで、こうした遺伝性疾患を確実に減らせる可能性があると解説しており、今後さらに普及していくことへの期待も示しています(確認日 2026-09-02)。とはいえ、検査だけですべてが解決するわけではありません。何の病気について、何がわかり、何がわからないかを理解したうえで利用することが大切です。検査の種類や仕組みは猫の遺伝子検査ガイド|種類・費用・何がわかるかにまとめました。検査を受けるかどうかを迷っているあいだも、うちの子の家系情報を記録として残しておくことはできます。

家系で備える|わかる範囲の情報を残しておく

要点: うちの子1頭だけを見ていても、遺伝性疾患の全体像はつかめません。両親猫・兄弟猫の傾向を知ることが、遠回りに見えて理解への近道になります。

遺伝性疾患というテーマの難しさは、うちの子1頭を見ているだけでは全体像がつかめない点にあります。原因となる遺伝子は両親から受け継がれ、兄弟猫にも同じ変異が伝わっている可能性があるからです。逆にいえば、両親猫・兄弟猫の傾向を知ることは、うちの子自身を理解するための遠回りに見えて近道になります。

うちのこ家系図は、まさにこの「わかる範囲の情報をつなげる」ための場所です。血統書があれば、画像から読み取れた情報を確認・補正しながら登録でき、なくても手元でわかる情報から少しずつ家系を組み立てられます。健康手帳の欄には日々の症状や通院の記録も残せるため、猫種ごとの傾向という「地図」と、うちの子自身の「現在地」を、同じ場所で照らし合わせられるようになります。

よくある質問

Q. 猫の遺伝病は犬より少ないのですか?

埼玉県獣医師会の資料では「猫の遺伝性疾患は犬ほど多くはありませんが、現在300種類以上が知られています」と紹介されています。犬の遺伝性疾患については犬の遺伝病一覧|代表的な病気と犬種別の傾向でも解説していますので、あわせてご覧ください。

Q. 血統書がない場合は、遺伝病の傾向はわかりませんか?

血統書がなくても、猫種がわかっていれば、その猫種で報告されやすいとされる病気の傾向を知ることはできます。血統書がない場合の家系図の作り方は血統書がなくても家系図は作れる|保護犬も対応で解説しています。

Q. 両親や兄弟の情報は、どこまで参考になりますか?

遺伝性疾患の原因となる遺伝子は、親から子へ受け継がれるため、両親や兄弟猫の健康状態は、うちの子を理解する手がかりのひとつになり得ます。ただし、原因遺伝子を1つだけ持ち発症しない場合もあるため、「両親が健康だから安心」とは言い切れない点にも注意が必要です。

まとめ

猫の遺伝性疾患は、心臓・腎臓・骨関節など体の様々な部位に関わり、300種類以上が知られています。ここまで見てきたポイントを振り返ります。

  • 遺伝性疾患は親の遺伝情報の変化が子に伝わって起こるもので、猫では「品種好発性疾患」とも呼ばれます
  • 猫種によって報告の多い病気の傾向は異なりますが、これは統計的な傾向にすぎず、その猫種の全個体に当てはまるものではありません
  • 雑種猫であっても、遺伝性の要因と完全に無縁というわけではありません
  • 遺伝子検査は万能ではなく、何がわかり何がわからないかを理解して利用するものです
  • 両親猫・兄弟猫の情報は、うちの子自身を理解する近道になり得ます

猫種の傾向を調べることは、うちの子を不安の目で見るためではなく、これから先の暮らし方を考える材料を手に入れるためのものです。わかることから少しずつ、家系の記録を積み上げていってください。


本記事は参考情報です。うちの子の症状・体質については、自己判断せず、かかりつけの獣医師にご相談ください。 記事中の情報は2026年9月2日時点で各公式サイトを確認したものです。

出典・参考

この記事について

内容確認日: 2026-09-02(この日時点の一次情報にもとづいています)

本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。