猫の柄・模様の種類図鑑|名前の由来と毛色遺伝のしくみ
内容確認日 2026-09-02・うちのこ家系図 読みもの

目次
「うちの猫の柄が何と呼ばれるのかわかりません」——保護猫を迎えたり、里親募集で出会ったりした猫の柄について、こう感じたことがある方は少なくないのではないでしょうか。キジトラ、サバトラ、茶トラ、サビ、三毛……。よく聞く名前は多いのに、それぞれの違いをきちんと説明できる人は意外と少ないものです。
この記事では、猫の柄・模様の名前とその由来を、公益財団法人日本動物愛護協会の毛色一覧と学術研究をもとに整理します。それぞれの柄がどんな遺伝子の組み合わせで生まれるのか、血統書の毛色欄はどう読めばいいのかまで、猫種を問わず解説していきます。
結論|猫の柄は「地色×縞×白の入り方×薄まり方」の組み合わせで決まる

要点: 猫の柄・模様は、単一の遺伝子で決まるものではなく、地色(黒系か茶系か)、縞模様(タビー)が出るかどうか、白斑がどれだけ入るか、色が薄まるかどうかという、複数の遺伝子座の組み合わせによって生まれます。
猫の柄は、一見すると無数のバリエーションがあるように見えますが、その正体は限られた数の遺伝子座(遺伝子の位置)の組み合わせです。大きく分けると、①黒系の色になるか茶系の色になるかを決める地色の因子、②縞模様(タビー)が出るかどうかを決める因子、③体のどこまで白い毛が入るかを決める因子、④色が薄まる(グレーがかる)かどうかを決める因子、という複数のレイヤーが重なり合って、キジトラやサバトラ、三毛といった見慣れた柄が生まれています。
以下、公益財団法人日本動物愛護協会が公開している毛色一覧の名前を軸に、それぞれの柄の名前と、決める遺伝子座の全体像を見ていきます。
柄・模様の名前一覧

要点: 代表的な柄には、縞模様の「キジトラ」「サバトラ」「茶トラ」、単色の「黒」「グレー」「白」、複数の色が入り混じる「サビ」「三毛」などがあります。公益財団法人日本動物愛護協会は、これらをさらに細かく分類した毛色一覧を公開しています。
公益財団法人日本動物愛護協会が地域猫(住民が世話をする屋外の猫)の記録のために公開している毛色一覧には、次のような名前が挙げられています(確認日 2026-09-02)。
| 分類 | 柄・毛色の名前 |
|---|---|
| キジトラ系 | キジトラ(茶系の地色に黒い縞)、こげ茶ヒョウ |
| キジ白 | キジ白、白キジ(トビ=白の割合が多いタイプ) |
| サバトラ系 | サバトラ(グレーがかった地色に黒い縞)、グレー系ヒョウ、アメショー風 |
| サバ白 | サバ白、白サバ(トビ) |
| 茶トラ | 茶トラ(赤茶色の地色に縞) |
| 黒・黒系 | 黒、ブラックスモーク |
| 黒白 | 黒白、白黒(トビ) |
| 茶・茶系 | こげ茶、赤茶・黄茶、うす茶・べージュ |
| グレー系 | グレー・ブルー |
| 白・白系 | 白、クリーム |
| 三毛 | 三毛、パステル三毛、シマ三毛 |
| サビ | サビ、パステルサビ、ムギワラ |
(公益財団法人日本動物愛護協会「地域猫の毛色一覧」・確認日 2026-09-02)
このほか、額に「M」字型の模様が入るタビー柄全般の総称として「キジトラ」「サバトラ」という言葉が使われることが多く、白と色が半々に近い割合で入り、顔の一部が白く見える柄は俗に「ハチワレ」とも呼ばれます。シャム猫のように顔・耳・脚・尾の先だけ色が濃くなる「ポインテッド」と呼ばれる配色パターンも、猫の柄を語るうえでよく知られたタイプのひとつです。
それぞれの柄を決める遺伝のしくみ

要点: 縞模様(タビー)が出るかどうかはTaqpepという遺伝子、白斑の広さはKITという遺伝子、色が薄まるかどうかはMLPHという遺伝子が関わっているとされています。茶色い毛色を決める遺伝子は、性染色体(X染色体)上のARHGAP36という遺伝子です。
柄の名前を知ったところで、次はその名前がどんな遺伝子の働きで生まれるのかを見ていきます。
縞模様(タビー): 猫のタビー柄には、大きな渦巻き状の模様が特徴の「ブロッチド(クラシック)タビー」と、体に平行な細い縞が入る「マッカレルタビー」があります。2012年に発表された研究では、Taqpep(Transmembrane Aminopeptidase Q)という遺伝子の働きが失われると、模様の周期性が乱れてブロッチドタビーになると報告されています(Kaelin et al., Science, 2012・確認日 2026-09-02)。つまり、縞が細かく規則正しく並ぶか、大きな渦巻きになるかは、この1つの遺伝子の働き方の違いによって決まるということです。
地色(黒系か茶系か): 黒系の色を出すか、茶系(オレンジ)の色を出すかを決める遺伝子は、性染色体(X染色体)上に存在するARHGAP36という遺伝子です。近年の研究では、この遺伝子の一部(約5,100塩基)が欠けていることが、茶色い毛色の正体だと報告されました(東邦大学「60年越しに解明された三毛猫の秘密」・確認日 2026-09-02)。この遺伝子がX染色体上にあることが、後述する三毛猫のオスの珍しさにもつながっています。
白斑の広さ: 体のどこまで白い毛が入るかは、KITという遺伝子が関わっているとされています。学術データベースOMIA(オーストラリア・シドニー大学が運営)では、白斑は「常染色体共優性」の遺伝形式を示すとされ、猫の内在性レトロウイルス(FERV1)がまるごとKIT遺伝子のイントロン1に挿入されていることが原因の変異として報告されています(OMIA・確認日 2026-09-02)。まったく白い毛が入らない猫から、体の大部分が白くなる猫まで、幅広いバリエーションが生まれる背景には、この遺伝子の働き方の強弱が関わっていると考えられています。
色の薄まり(希釈): 学術データベースOMIAには、猫の「希釈(dilution)」がMLPH(メラノフィリン)という遺伝子に関連する形質として登録されています。遺伝形式は常染色体潜性で、MLPH遺伝子の1塩基の欠失(c.83delT)が原因の変異とされています(OMIA・確認日 2026-09-02)。一般に、黒がグレー(ブルー)に、赤茶がクリームに見える毛色が「薄まった色」と呼ばれます。日本動物愛護協会の一覧にある「パステル三毛」「パステルサビ」がこの遺伝子によるものかどうかを述べた一次資料は確認できていないため、ここでは名前の対応づけにとどめます。
三毛にオスが少ない理由・白猫と聴こえ
要点: 三毛猫のオスが珍しいのは、地色を決める遺伝子が性染色体(X染色体)上にあるためです。白猫と聴こえの関係も、それぞれ専用記事で詳しく解説しています。
すでに触れたとおり、地色(黒系か茶系か)を決める遺伝子は性染色体(X染色体)上にあります。メス猫はX染色体を2本持つため黒系・茶系の両方を受け継げますが、オス猫は通常1本しか持たないため、三毛の柄はほぼメスに限られます。この仕組みと、まれにオスの三毛猫が生まれる理由については、三毛猫のオスが珍しい理由|毛色と性染色体の仕組みで詳しく解説しています。
また、真っ白な毛色と、聴こえにくさ(難聴)との間には関連が指摘されることがあります。この仕組みについては白猫にオッドアイが多い理由|毛色と難聴の関係で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
柄と性格の関係で言われていること

要点: 「柄によって性格の傾向が違う」という話は広く語られていますが、大学の調査で研究テーマとして扱われていることが紹介されているにとどまり、断定的な結論として確立されているわけではありません。
「茶トラは甘えん坊」「サビ猫は気まぐれ」——猫の柄と性格を結びつけた話は、SNSや書籍でもよく見かけます。実際に、柄と性格の関係を調べる研究が行われていることは、大学が発信する記事でも紹介されています。ただし、こうした研究の多くは飼い主へのアンケート調査などにもとづくもので、「この柄だから必ずこの性格になる」と断定できるほどの、確立された結論があるわけではありません。柄はあくまで見た目の特徴であり、性格を占うためのものではないという受け止め方が、現時点では実情に近いといえそうです。
血統書の毛色欄はどう読む?

要点: 血統書付きの猫には、毛色や柄の情報が独自の表記で記載されています。詳しい読み方は、猫の血統書に関する専用記事で解説しています。
血統書のある猫の場合、毛色欄には、この記事で紹介したような日本語の柄の名前ではなく、団体ごとに定められたアルファベットの略号で毛色・柄が記載されていることがあります。この表記のルールは、発行団体によって細かな違いがあります。血統書全体の見方や発行団体ごとの違いについては、猫の血統書の見方|CFA・TICA等5団体ガイドで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
柄を家系図に記録する

要点: うちの子の柄がどんな名前で、両親からどう受け継がれたのかを、家系図と一緒に記録として残しておくことができます。
柄の名前と由来を知ると、うちの子の見た目が、両親や兄弟猫とどうつながっているのか気になってくるかもしれません。うちのこ家系図では、うちの子の柄や毛色の情報も、家系図と一緒に記録として残しておけます。血統書がなくても、わかる範囲の情報から記録を始められます。無料・登録不要で試せます。
よくある質問
Q. うちの猫の柄が何と呼ばれるのかわかりません。キジトラとサバトラ、茶トラの違いを教えてください
公益財団法人日本動物愛護協会の一覧では、キジトラは「茶系・黒シマ」、サバトラは「グレー系・黒シマ」、茶トラは「赤茶シマ」と分類されています(確認日 2026-09-02)。つまり3つはいずれも縞模様(タビー)の柄で、違いは地色にあります。キジトラは茶系の地色に黒い縞、サバトラは灰色がかった地色に黒い縞、茶トラは赤茶色の地色に濃い赤茶の縞です。サバトラの灰色がどの遺伝子によるものかを述べた一次資料は今回確認できなかったため、この記事では遺伝子との対応づけはしていません。
Q. 血統書の毛色の欄に英語の略語が書いてあります。これは柄のことですか?家系図にどう書けばいいですか?
はい、多くの場合、体の色や柄を示す略号です。団体によって表記のルールが異なるため、正確な読み方は猫の血統書の見方|CFA・TICA等5団体ガイドで解説している内容をご参照ください。家系図には、略号をそのまま書き写しても構いませんし、この記事で紹介したような日本語の柄の名前を添えて記録しておくと、あとから見返したときにわかりやすくなります。
Q. 雑種猫(血統書のない猫)の柄の由来も、同じように考えていいですか?
はい。柄を決める遺伝子座の仕組みは、血統書の有無にかかわらず共通しています。雑種猫(ミックス猫)に多いキジトラ・サバトラ・サビといった柄の由来や、「雑種は病気に強い」という話の実際については、雑種猫(ミックス猫)の遺伝と健康|柄の由来から解説でも詳しく解説しています。
まとめ|柄の名前は、遺伝子の組み合わせが生んだ個性
- 猫の柄は、地色(黒系・茶系)、縞模様(タビー)の有無、白斑の広さ、色の薄まりという、複数の遺伝子座の組み合わせで決まる
- キジトラ・サバトラ・茶トラ・三毛・サビなど、公益財団法人日本動物愛護協会の毛色一覧をもとに代表的な柄を整理した
- タビー柄はTaqpep遺伝子、地色はARHGAP36遺伝子、白斑はKIT遺伝子、色の薄まりはMLPH遺伝子が関わっているとされる
- 柄と性格の関係は研究テーマとして扱われているが、断定できるほどの結論は確立されていない
- 血統書がある猫は、毛色欄の略号と、この記事で紹介した柄の名前をあわせて記録すると読みやすくなる
うちの子の柄がどんな名前で、どんな仕組みで生まれたのかを知ると、いつもの1枚がまた違って見えてくるかもしれません。柄や毛色の情報も、家系図と一緒に記録として残してみませんか。
本記事は公益財団法人日本動物愛護協会の毛色一覧・大学の研究発表・学術データベースをもとにした参考情報です。柄・性格の関係を断定するものではありません。個体の健康状態について気になる点がある場合は獣医師にご相談ください。 記事中の情報は2026年9月2日時点で各公式サイト・論文を確認したものです。
出典・参考
- 公益財団法人日本動物愛護協会「地域猫の毛色一覧」 (確認日 2026-09-02) https://jspca.or.jp/localcat_coat_color_list.html
- 東邦大学 理学部生物学科「60年越しに解明された三毛猫の秘密」(後藤友二) (確認日 2026-09-02。K42・K6で確認済みの一次資料を再確認。Toh H, et al. "A deletion at the X-linked ARHGAP36 gene locus is associated with the orange coloration of tortoiseshell and calico cats." Current Biology, 2025を紹介する大学公式コラム) https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0847.html
- Kaelin CB, Xu X, Hong LZ, et al. "Specifying and Sustaining Pigmentation Patterns in Domestic and Wild Cats." Science, 2012, 337(6101), 1536-1541. (確認日 2026-09-02) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3709578/
- OMIA(University of Sydney)"Coat colour, white spotting, KIT-related in Felis catus (domestic cat)" (確認日 2026-09-02) https://omia.org/OMIA001737/9685/
- OMIA(University of Sydney)"Coat colour, dilution, MLPH-related in Felis catus (domestic cat)" (確認日 2026-09-02) https://www.omia.org/OMIA000031/9685/
この記事について
内容確認日: 2026-09-02(この日時点の一次情報にもとづいています)
本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
つづけて読む
雑種猫(ミックス猫)の遺伝と健康|柄の由来から解説
「雑種猫は病気に強い」は本当か。キジトラ・サバトラ・サビといった柄の由来から、雑種強勢の考え方、それでも残るリスクまで、一次情報をもとに整理します。雑種猫は血統書がなく両親の系統がわからないことが多い、という猫特有の事情も解説します。
よむ猫のはなし三毛猫のオスが珍しい理由|毛色と性染色体の仕組み
三毛猫のオスはなぜ数万匹に1匹といわれるほど珍しいのか。毛色を決める遺伝子と性染色体(X染色体)の関係、まれにオスが生まれる染色体構成のケースまで、大学の研究発表をもとに解説します。
よむ猫のはなし白猫にオッドアイが多い理由|毛色と難聴の関係
白猫は、なぜ青い目やオッドアイになりやすいのか。そして、白い毛色や青い目と難聴の関係は、どこまで科学的にわかっているのか。ルイジアナ州立大学の研究をもとに、誇張せず整理しました。
よむ