犬種と健康

犬の白内障|遺伝性が報告される犬種と、家系で残す目の記録

内容確認日 2026-09-04うちのこ家系図 読みもの

目を見せてくれる犬と飼い主。遺伝性の白内障が報告される犬種と、家系で残す目の記録
目次
  1. 1結論|白内障には「加齢」のほかに「遺伝性」とされる区分がある
  2. 2遺伝性白内障とは|原因遺伝子が判明している例
  3. 3報告がある犬種の広がり
  4. 4PRAとは別の目の病気
  5. 5遺伝子検査でわかること・わからないこと
  6. 6家系で残す目の記録
  7. 7よくある質問
  8. 8まとめ|「見た目が白い」だけでは判断できない

「3歳なのに白内障と言われました。年をとってからの病気だと思っていたのに」——このような声を、白内障と診断された若い犬の飼い主から聞くことがあります。白内障は加齢によるものだけでなく、若い年齢で報告される「遺伝性」とされる区分があります。

この記事では、原因遺伝子がわかっている犬種の例、報告がある犬種の広がりを一次情報をもとに整理し、遺伝子検査でわかること・わからないこと、そして家系で目の記録をどう残すかを紹介します。

結論|白内障には「加齢」のほかに「遺伝性」とされる区分がある

窓辺で飼い主が持ち上げたボールを目で追って顔を上げる黒白のボストン・テリア

要点: 白内障は水晶体が濁って視界を妨げる状態です。MSD獣医マニュアルは、犬の白内障の多くは遺伝性とされ、そのほか糖尿病などが原因になることもある(糖尿病の犬の85%超)と紹介しています。加齢による水晶体の変化(核硬化症)とは別の状態です。

MSD獣医マニュアルは、白内障を「水晶体もしくはその被膜の混濁」と定義し、若い犬に見られるわずかな水晶体の不完全さや、加齢に伴って正常に起こる水晶体核の密度の上昇とは区別すべきだとしています(MSD Veterinary Manual「The Lens in Animals」・確認日 2026-09-04)。犬の白内障は「しばしば遺伝性」とされ、他の動物種に比べて犬で多くみられるとも説明されています(同上)。

同マニュアルはまた、糖尿病を原因とする白内障(続発性)が近年増えており、血糖のコントロール状況にかかわらず、糖尿病の犬の85%超にみられるとしています(同上)。つまり、目が白っぽく見える状態のすべてが遺伝性の白内障というわけではなく、加齢に伴う正常な変化や、糖尿病など別の原因による続発性のものと区別して考える必要がある、ということです。

遺伝性白内障とは|原因遺伝子が判明している例

ラグに並んで伏せる同じ黒・白・茶のオーストラリアン・シェパードの成犬と子犬、後ろに座る女性

要点: 学術データベースOMIAには、HSF4という遺伝子に関わる早発性の遺伝性白内障が登録され、複数の犬種の名前とともに常染色体潜性(一部の犬種では共優性)の体質として紹介されています。MSD獣医マニュアルの犬種別発症年齢の表では、若い年齢で報告される例が複数あり、「何歳から」という一律の答えはなく犬種によって幅があります。

原因遺伝子までわかっている遺伝性白内障の代表例が、HSF4(熱ショック転写因子4)という遺伝子に関わるものです。学術データベースOMIAには、この遺伝子に変異があるとオーストラリアン・シェパード、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、ミニチュア・ピンシャー、スタッフォードシャー・ブル・テリアの名前とともに登録されています(OMIA「Cataract, early onset, HSF4-related」・確認日 2026-09-04)。遺伝形式は多くの犬種で常染色体潜性(両親それぞれから1つずつ受け継いだ場合に発症しうる型)とされていますが、オーストラリアン・シェパードでは1つのコピーだけで両側性の後部白内障が起こり、2つ受け継いだ場合には核性の白内障が起こるとされる共優性の報告もあります(同上)。

「何歳から」という問いに、一律の答えはありません。MSD獣医マニュアルが示す犬種別の発症年齢の一覧には、生後6か月〜12か月ごろとされるアフガン・ハウンド、生後6か月以降とされるゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、1〜6年とされるアメリカン・コッカー・スパニエル、2〜6年とされるビション・フリーゼなど、犬種によって幅のある報告が並んでいます(MSD Veterinary Manual「Disorders of the Lens in Dogs」・確認日 2026-09-04)。生まれつきや、生後まもなくから報告される犬種がある一方で、成犬になってから報告される犬種もある、という理解が実情に近いといえます。

犬全体でどのくらいの割合なのかを、分母つきで示した報告もあります。北米の獣医大学付属病院に1964年から2003年までに来院した犬を対象にした後ろ向き研究では、白内障で来院した犬の割合が10年ごとに0.95%(1964-73年)から3.5%(1984-93年)のあいだで推移し、40年間で白内障の犬は延べ39,229頭にのぼったと報告されています。同じ研究では、ミックス犬・雑種を対象にしたベースラインの割合1.61%を上回る犬種として59犬種が挙げられました。年齢との関係については、ミックス犬・雑種のうち7歳から15歳以上の集団を対象にすると16.80%に白内障がみられ、4〜7歳を過ぎたあたりから頻度が上がると報告されています(Gelatt KN, MacKay EO. Veterinary Ophthalmology 2005;8(2):101-111・確認日 2026-09-04)。ただしこれは動物病院に来院した犬の集団の集計であり、家庭で暮らす犬全体の割合をそのまま表すものではありません。

報告がある犬種の広がり

要点: 遺伝性白内障の報告は、この記事で挙げた犬種以外にも広がっています。犬種ごとの詳しい話は、それぞれの犬種の記事に譲ります。

遺伝性の白内障は、ここまでに挙げた犬種以外でも報告されています。当サイトでは、トイプードルの遺伝病7種|家系で早期発見する方法柴犬の遺伝病5種|GM1・皮膚・目と家系ミニチュアシュナウザーの遺伝病|高脂血症と結石でも、それぞれの犬種で報告されている白内障に触れています。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはこの犬種で名前が挙がる病気と家系での備え、ビション・フリーゼはひざ・目・尿路の報告と家系での備え、アメリカン・コッカー・スパニエルは目・耳・皮膚の報告と家系での備え、親犬種2つの体質を受け継ぐミックスはシュナプーで気をつけたい病気で、それぞれ扱っています。犬種ごとの背景や、あわせて知っておきたい病気は、各記事で詳しく紹介しています。

PRAとは別の目の病気

要点: 白内障は水晶体の病気で、進行性網膜萎縮症(PRA)は網膜の病気です。両方とも「見えにくくなる」という点は共通しますが、起きている場所が違う別の病気です。

「目が白く見える」ことから連想されやすい病気に、進行性網膜萎縮症(PRA)があります。しかし白内障は水晶体が濁る病気であるのに対し、PRAは網膜の細胞が徐々に働きを失っていく病気で、起きている場所が異なる別の病気です。PRAの仕組みや、犬種ごとの報告については犬の進行性網膜萎縮症|犬種別・家系で早期発見にまとめています。目が白っぽく見える、見えにくそうにしているといった変化に気づいたら、どちらの病気かを自己判断せず、獣医師の診察を受けてください。

遺伝子検査でわかること・わからないこと

テーブルで細い綿棒を持ち、そばに座るボストン・テリアの口元に近づける男性

要点: HSF4に関わる遺伝子検査は、対象になっている犬種が限られています。遺伝子検査全般でわかること・わからないことの一般論は、別の記事にまとめています。

原因遺伝子が特定されている白内障については、遺伝子検査でクリア・キャリア・アフェクテッドの結果がわかる場合があります。ただし対象になっているのはHSF4の変異が報告されている一部の犬種にとどまり、すべての遺伝性白内障に対応する検査があるわけではありません。遺伝子検査の種類や、わかること・わからないことの一般論は犬の遺伝子検査ガイド|種類・費用・何がわかるかで紹介しています。

家系で残す目の記録

床に座ってローテーブルの無地のノートに鉛筆で書き込む女性と、すぐ横で伏せる黒白のボストン・テリア

要点: 健診の眼科所見や、両親犬・兄弟犬の目に関する情報は、その子個体だけを見ていてはわからない手がかりです。家系図に記録として残しておくと、後で見比べる材料になります。

白内障が遺伝性かどうかを、うちの子1頭を見ただけで判断することはできません。手がかりになるのは、健診のたびに眼科的な所見が記録されているか、両親犬・兄弟犬に白内障や目の変化が報告されているかという、家系の情報です。

  • 健診で目について何か指摘を受けたことがあるか(あれば日付とともに)
  • 両親犬・兄弟犬の目について、お迎え元から聞いている情報(わかる範囲で)
  • 生まれた犬舎(うちの子の実家)やお迎え元、誕生日

うちのこ家系図では、血統書があってもなくても、わかる範囲の情報から家系図を作れます。健診の結果とあわせて、動物病院での問診の際に見せられる状態にしておくと、伝え漏れを防ぐ助けになります。

そもそも健診をどのくらいの間隔で受けるかという目安は年に何回受けるかの考え方と、結果の残し方に、血統書から親・祖父母をたどる手順は血統書から無料で家系図をたどる方法にまとめました。

よくある質問

Q. 何歳から気をつければいいですか?

犬種によって報告される年齢に幅があり、一律の答えはありません。生後半年ごろから報告される犬種もあれば、数年たってから報告される犬種もあります。詳しくは「遺伝性白内障とは|原因遺伝子が判明している例」をご覧ください。

Q. 手術は必要ですか?

手術の要否は、うちの子の状態を見ている獣医師が判断する領域です。この記事では扱いません。

Q. ミックスの子でも遺伝性の白内障はありますか?

遺伝性の白内障は特定の犬種だけの病気ではなく、原因遺伝子が両親から受け継がれていれば、ミックスの子にも起こりえます。ミックスの子の遺伝病リスクが本当に低いのかという話はミックス犬の遺伝病リスクの実際に、親犬種2つの体質をどう見るかの具体例はシュナプーで気をつけたい病気にまとめています。

まとめ|「見た目が白い」だけでは判断できない

  • 白内障は水晶体が濁る病気で、加齢による正常な変化(核硬化症)とは別の状態
  • 犬の白内障の多くは遺伝性とされ、HSF4など原因遺伝子が判明している例がある
  • 「何歳から」の答えは犬種によって幅があり、一律ではない
  • PRAは網膜の病気で、白内障とは起きている場所が違う別の病気
  • 健診の眼科所見と、両親犬・兄弟犬の目の情報を家系図に残しておくことが手がかりになる

目が白っぽく見える、というだけでは、加齢によるものか、遺伝性かを判断できません。気になる変化があれば、まず獣医師に相談し、そのうえで家系の情報を記録に残しておくことが、次の一歩につながります。


本記事は参考情報です。この記事は病気の診断・治療方針を示すものではありません。目に関する変化に気づいたら、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。 記事中のデータは2026年9月4日時点でOMIA・MSD獣医マニュアルの各ページを確認したものです。

出典・参考

  • OMIA(Online Mendelian Inheritance in Animals・シドニー大学)「Cataract, early onset, HSF4-related in Canis lupus familiaris (dog)」 (確認日 2026-09-04。ページ本文を取得し、遺伝形式・原因遺伝子・掲載犬種・参考文献をgrepで逐語照合) https://omia.org/OMIA001758/9615/
  • MSD Veterinary Manual(Merck Veterinary Manual)「Disorders of the Lens in Dogs」 (確認日 2026-09-04。白内障の定義・犬種別発症年齢の表・加齢による水晶体核硬化症との違いをgrepで逐語照合) https://www.msdvetmanual.com/dog-owners/eye-disorders-of-dogs/disorders-of-the-lens-in-dogs
  • Gelatt KN, MacKay EO「Prevalence of primary breed-related cataracts in the dog in North America」(Veterinary Ophthalmology 2005;8(2):101-111) / https://europepmc.org/article/MED/15762923 (確認日 2026-09-04。EuropePMCのREST API〈resultType=core〉をChrome系の通常UAで叩き〈HTTP 200〉、抄録全文を取得して有病率・ベースライン・年齢との関係の記述をgrepで逐語照合した。出版社(Wiley)の本文ページは通常UAでHTTP 403のため、確認できたのは抄録の範囲) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15762923/
  • MSD Veterinary Manual(Merck Veterinary Manual)「The Lens in Animals」 (確認日 2026-09-04。ページ本文を取得し、白内障の定義・遺伝性の記述・糖尿病との関連の記述をgrepで逐語照合。当初参照した「Cataracts in Dogs」という独立URLは404で到達不可だったため、同一内容が確認できる専門家向けページに差し替え) https://www.msdvetmanual.com/eye-diseases-and-disorders/ophthalmology/the-lens-in-animals

この記事について

内容確認日: 2026-09-04(この日時点の一次情報にもとづいています)

本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。