アビシニアンの性格と特徴|柄は毛1本の中にある
内容確認日 2026-09-07・うちのこ家系図 読みもの

目次
被毛を毛先までよく見ると、1本1本の毛の中に、明るい色と濃い色が交互に並んでいるのに気づきます。多くの猫種の柄が「体のどこに何色が乗っているか」で語られるのに対し、この猫種の柄は「毛1本の中」で完結しています。ティックド(ticking)と呼ばれるこの柄について、CFA・TICAの品種標準、UC Davis獣医遺伝学研究所・OMIA・埼玉県獣医師会の資料をもとに、柄の正体から名前が挙がる病気まで見ていきます。
結論|柄が毛の中にある猫

要点: CFAの品種標準では、模様(Ticking)1項目だけに100点中15点が配点されています。1本の毛の中に濃い色の帯が2〜3本入ると標準は定めており、この帯の数え方が、柄を理解する出発点になります。
CFAの品種標準のPOINT SCORE表には、COLOR(35点)の内訳として「Color 15点・Ticking 15点・Eye Color 5点」という配点が示されています(CFA・Show Standard)。被毛の質感(Texture)10点と合わせても、模様に振られる15点という数字の大きさが目立ちます。
同じ標準のCOAT欄には、被毛について「柔らかく絹のようで質感がきめ細かく、密で弾力がある。長さは中程度だが、濃い色の帯が2〜3本入るのに十分な長さがある」という記述があります(CFA・Show Standard)。「毛1本の中に色の帯が入る」という柄の正体が、ここに定められています。
1本の毛に縞がある|ティックドという柄の正体

要点: CFAの品種標準は1本の毛に「濃い色の帯が2〜3本」、TICAの品種標準は「明暗が交互に4〜6本」と書いています(TICAの解説ページ側は「色が交互に並ぶ4〜6本」)。数えているものが違います。UC Davisの資料によれば、この柄はアグーチ関連の遺伝子の働きで生まれます。
CFAの品種標準は、1本の毛に入る濃い色の帯を2〜3本としています(CFA・Show Standard、前掲)。一方、TICAの公式ブリードページは「1本1本の毛の軸に、豊かな色が交互に並ぶ4〜6本の帯がある」と説明しており(TICA・ブリードページ)、TICAの品種標準には、短毛タイプについて「明暗が交互に並ぶ帯が4〜6本入るのに十分な長さ」という条項があります(TICA・Breed Standard)。「明暗」という語を使っているのは標準の側で、解説ページの側は「色が交互に並ぶ」と書いています。
数字だけを見ると2〜3本と4〜6本で食い違っているようですが、CFAは「濃い色の帯だけ」を数え、TICAは「明暗を交互に数えた帯」を数えています。CFAの標準のABYSSINIAN COLORS節は、ティッキングについて「はっきりと均一で、尾の先の色にあたる濃い色の帯が、下毛の色の帯と対照をなして毛の軸に並ぶ。下毛の色は皮膚まで澄んで明るい」と定めており(CFA・Show Standard)、CFAが数えている「濃い色の帯」が何を指しているかは、この節に書かれています。資料から言えるのは、2団体で数え方が異なるというところまでです。どちらが正しい、あるいは矛盾しているとは言い切れません。
この仕組みを遺伝子のレベルで説明しているのが、UC Davis獣医遺伝学研究所の資料です。アグーチ・シグナリング・タンパク質が、メラノコルチン1受容体という部位と作用し合うことで、黒っぽい色素と赤みがかった色素を切り替え、1本の毛の中に帯状の模様を作り出しているとされています。この遺伝子(ASIP)に変異が入ると切り替えが起こらなくなり、単色の毛になるとされています(UC Davis VGL)。同研究所は、この単色になる型(ノンアグーチ)について「単色の猫は毛の中に交互の色素を持たず、単色に見える」と説明したうえで、その遺伝形式を常染色体潜性としています(UC Davis VGL)。潜性なのは縞が消えて単色になる側であって、縞が入る側ではありません。学術データベースのOMIAには、鍵となる変異が2003年に報告されたと記録されています(OMIA)。帯の本数だけでなく帯の長さも見え方を左右するとされており(UC Davis VGL)、本数と長さの組み合わせが、1頭ごとの毛の見え方を作っています。同じ両親から生まれたきょうだいでも、光の当たり方や毛の伸び方によって帯の見え方の印象は変わります。実際に何本の帯が見えるかを写真と一緒に記録しておくと、成長にともなう変化をあとから見比べるときの手がかりになります。
色の区分|4つの色名が何を指しているか

要点: CFAは色を4色(ルディ・シナモン・ブルー・フォーン)に限定しており、それぞれの色名は「地色」と「ティッキングの色」の組み合わせで定義されています。TICAは伝統区分とシルバー区分という2区分を設けています。
CFAの品種標準は失格の条件として「4つの承認された色以外のすべての色」を挙げており(CFA・Show Standard)、認められる色はルディ・シナモン・ブルー・フォーンの4色に限られています。それぞれの色は「地色」と「ティッキングされる色」の組み合わせで定義されており、例えばルディは「地色は赤みを帯びた茶色(バーントシエナ)で、黒でティッキングされる」とされています(CFA・Show Standard)。色名がそのまま、毛1本の中の2色の組み合わせを指す名前になっているわけです。
TICAは色の区分の立て方が異なり、伝統区分とシルバー区分という2つの区分を設けたうえで、伝統区分にルディ・シナモン・チョコレート・ブルー・フォーン・ライラックの色名を、シルバー区分にはブラックシルバー・シナモンシルバー・チョコレートシルバー・ブルーシルバー・フォーンシルバー・ライラックシルバーの色名を挙げています(TICA・ブリードページ)。伝統区分の先頭はルディ、シルバー区分の先頭はブラックシルバーで、両区分の色名は同じ並びにはなっていません。品種標準にも「シルバー区分で違うのはアンダーコートの色だけで、ティッキングの色はどちらの区分でも共通」という趣旨の記述があります(TICA・Breed Standard)。同じ猫種でも、団体によって色の切り分け方が違うということです。血統書に書かれる毛色欄は、こうした団体ごとの色区分の違いをそのまま反映しています。毛色欄がどちらの団体の基準で書かれているかによって、同じ毛の見え方でも呼び方が変わることがあります。両親猫の毛色欄と実際の毛の帯を照らし合わせて記録しておくと、色名がどちらの基準に沿っているのかを追いやすくなります。
動き回るとよく言われることと、標準の記述

要点: CFAの品種標準のGENERAL(総則)には「機敏でしなやかに引き締まった体つきで、熱心な活動性と周囲への強い関心を示す」という記述があります。TICAの公式ブリードページも「非常に高い活動レベルを持つ品種」だと紹介しています。
まず審査基準の側から見ると、CFAの品種標準のGENERAL(総則)には「理想的な姿の全体的な印象は、はっきりとティッキングされた被毛を持つ、中くらいの大きさで威厳のある色鮮やかな猫。機敏でしなやかに引き締まった体つきを持ち、熱心な活動性と周囲へのいきいきとした関心を示す」と記されています(CFA・Show Standard)。審査で求められる体つきの説明の中に、すでに活発さを示す言葉が組み込まれているわけです。
利用者向けの解説ページ側も、方向はほぼ重なります。TICAの公式ブリードページは、この品種について「非常に高い活動レベルを持つ」とし、「天井の扇風機の上に座る猫にストレスを感じるなら、この品種は向いていない」というたとえで説明しています(TICA・ブリードページ)。審査基準の文書と利用者向けの解説文という、書かれた目的の異なる2つの資料が、活発さについてはおおむね食い違わずに書かれているということです。もっとも、これはあくまで団体側がまとめた一般的な傾向であって、一頭ごとの性格まで保証するものではありません。
どんな病名が、どの欄に載っているか
要点: TICAの健康タブには、ピルビン酸キナーゼ欠損症と進行性網膜萎縮症の名前が挙げられています。埼玉県獣医師会の資料でも、この2つの病気それぞれの好発品種欄にこの猫種の名前が合わせて2回登場しますが、人気猫種ランキングの一覧には載っていません。
健康に関わる項目に目を移すと、TICAの公式ブリードページはこの猫種で注意すべき項目をいくつか挙げています(TICA・ブリードページ)。このうち当サイトに対応する記事があるのは、ピルビン酸キナーゼ欠損症と進行性網膜萎縮症の2つです。それぞれの検査結果の読み方と型は、猫の遺伝子検査ガイドと猫の進行性網膜萎縮症の記事にまとめています。挙げられている項目はほかにもありますが、当サイトに対応する記事がないものは、ここでは病名に触れません。もう1つ、腎臓に関わる項目もそこに含まれていますが、腎臓については猫の腎臓病の記事で扱っています。
公益社団法人埼玉県獣医師会がまとめた資料でも、名前を確認できます。ピルビン酸キナーゼ欠損症と進行性網膜萎縮症、それぞれの好発品種欄に1回ずつ、合わせて2回この猫種の名前が登場します(埼玉県獣医師会)。一方で、同じ資料にある「人気猫種ランキングベスト10と起こりやすい遺伝性疾患」という番号つきの一覧10種の中には入っていません。人気の順位に載っていないことと、病気の報告そのものが無いことは別の話です。遺伝性疾患全体の一覧は猫の遺伝病一覧にまとめています。
毛の出方と検査の結果を、親子でそろえて残す

1本の毛に何本の帯が入るか、色がどの4色に当たるかは、両親猫・きょうだい猫の記録があると見比べやすくなります。うちのこ家系図では、血統書の有無にかかわらず、毛の出方や遺伝子検査の結果を書き残せます。親子で並べて記録しておくと、毛色を見立てるときの手がかりにもなります。
よくある質問
Q. 「ティックド」とはどんな柄ですか?
1本の毛の中に、明るい色と濃い色の帯が交互に入る柄のことです。CFAの品種標準は濃い色の帯を2〜3本、TICAの品種標準は明暗を交互に数えて4〜6本としており、数えているものが異なります。
Q. アビシニアンで認められている色は何色ですか?
CFAはルディ・シナモン・ブルー・フォーンの4色に限定しています。TICAは伝統区分とシルバー区分の2区分を設けており、団体によって色の切り分け方が異なります。
Q. 資料にはどんな病気の名前が出てきますか?
TICAの健康タブと埼玉県獣医師会、いずれの資料にもピルビン酸キナーゼ欠損症と進行性網膜萎縮症の名前があります。型や検査の読み方については、それぞれ専用の記事にまとめています。
まとめ|柄も色の区分も、「毛1本」を基準に定められている
- CFAの品種標準は模様(Ticking)1項目だけに100点中15点を配点しており、1本の毛に濃い色の帯が2〜3本入ると定めている
- TICAは明暗を交互に数えて4〜6本としており、2団体で数えているものが異なる
- ティックドはアグーチ関連の遺伝子(ASIP)の働きで生まれる。常染色体潜性とされているのは縞が消えて単色になる側(ノンアグーチ)の遺伝形式で、鍵となる変異は2003年に報告された
- CFAは色をルディ・シナモン・ブルー・フォーンの4色に限定し、TICAは伝統区分とシルバー区分の2区分を設けている
- TICAの健康タブと埼玉県獣医師会の資料の両方に、ピルビン酸キナーゼ欠損症と進行性網膜萎縮症の名前が挙げられている
毛の出方も色の区分も、親子で見比べるとつながって見えてきます。アビシニアンのうちの子の記録を、家系図として残してみませんか。
本記事は参考情報です。猫種の傾向は個体差があり、すべての子に当てはまるものではありません。健康に関する記述は診断・治療を目的とするものではなく、気になる症状は獣医師にご相談ください。 記事中の引用・数値は2026年9月7日にCFA公式サイト・TICA公式サイト・埼玉県獣医師会公式サイト・OMIA公式サイト・UC Davis Veterinary Genetics Laboratory公式サイトを確認したものです。
出典・参考
- CFA(The Cat Fanciers' Association)"Abyssinian" Show Standard(PDF・revised 2025) (確認日 2026-09-07・HTTP 200・61,682バイト。POINT SCORE表/COAT欄/DISQUALIFY欄/ABYSSINIAN COLORS節/GENERAL欄を原文照合) https://cfa.org/wp-content/uploads/2024/02/abyssinian-standard.pdf
- TICA(The International Cat Association)公式ブリードページ "Abyssinian" (確認日 2026-09-07・HTTP 200。Traitsタブ/Personalityタブ/At a Glance欄を原文照合) https://tica.org/breed/abyssinian/
- TICA "ABYSSINIAN BREED GROUP (AB/SO)" Breed Standard(PDF・Abyssinian Breed Group Standard, 05/01/2008) (確認日 2026-09-07・HTTP 200。COAT/COLOR/PATTERNのLength (AB)行と見出しブロックのみ原文照合。Length (SO)以下のソマリの記述は使用していない) https://tica.org/wp-content/uploads/2018/08/ab.pdf
- UC Davis Veterinary Genetics Laboratory(カリフォルニア大学デービス校 獣医遺伝学研究所)"Agouti" (確認日 2026-09-07・HTTP 200) https://vgl.ucdavis.edu/test/agouti-cat
- OMIA(シドニー大学 Online Mendelian Inheritance in Animals)"OMIA:000201-9685 : Coat colour, agouti in Felis catus (domestic cat)" (確認日 2026-09-07・HTTP 200。OMIAがEizirik et al., 2003を引用している記述として使用) https://omia.org/OMIA000201/9685/
- 公益社団法人埼玉県獣医師会「猫の遺伝性疾患について」 (確認日 2026-09-07・HTTP 200。掲載範囲の確認にのみ使用。好発品種欄の逐語はK16・K21・K24の領域のため引用していない) https://www.saitama-vma.org/topics/%E7%8C%AB%E3%81%AE%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
この記事について
内容確認日: 2026-09-07(この日時点の一次情報にもとづいています)
本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
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