猫の腎臓病|シニア期に多いとされる理由と、家系と数値の推移を残すこと
内容確認日 2026-09-04・うちのこ家系図 読みもの

目次
「健診で『腎臓の数値が少し高めですね』と言われました」——シニア期に入った猫の飼い主から、こうした相談をよく聞きます。治療の方針は先生と決めるとして、自分では何を残しておけばいいのか、迷う場面です。
この記事は治療や食事療法の話はしません。この病気がどんな輪郭を持つ病気なのか、なぜシニア期の猫に多いと言われるのかを、国際的な専門家グループの解説をもとに紹介したうえで、健診の数値をどう残すと後で役立つのか、両親猫・兄弟猫の情報が手がかりになりうるのかをお伝えします。
結論|この記事は治療の話をしない——病気の輪郭と、残しておくと役に立つ記録の話をする
要点: 猫の腎臓病(慢性腎臓病)は、シニア期の猫に多いとされる病気です。この記事では治療方針・食事療法・投薬には触れず、病気の輪郭と、健診の数値・家系の情報をどう残しておくかに絞って紹介します。
猫の腎臓病と一口に言っても、遺伝性のもの(後述の多発性嚢胞腎)と、加齢とともに起こるとされる慢性の腎臓病は別のものです。この記事が扱うのは後者、いわゆる「慢性腎臓病」と呼ばれる、シニア期の猫に多いとされる病気です。治療方針・食事療法・投薬の要否は、うちの子を診ている獣医師が判断する領域であり、この記事では扱いません。
シニア猫に多いとされる腎臓の病気とは

要点: 国際的な猫の専門家グループのガイドラインは、慢性腎臓病は高齢の猫でより多くみられ、10歳を超えた猫の30〜40%以上に影響しうると紹介しています(同ガイドライン自身の推計ではなく、引用元の過去の報告にもとづく紹介です)。年齢群ごとの割合を分母つきで示した研究もあります。健診では血液・尿の検査で腎臓に関する項目を見ており、この記事では項目の名前までにとどめ、基準値や数値の読み方には踏み込みません。
猫の腎臓病(慢性腎臓病)は、シニア期の猫でよくみられる病気のひとつとして紹介されています。国際的な猫の専門家グループがまとめたガイドラインは、慢性腎臓病は高齢の猫でより多くみられ、10歳を超えた猫の30〜40%以上に影響しうると紹介しています(Sparkes AH, et al.「ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease」Journal of Feline Medicine and Surgery 2016;18(3):219-239・確認日 2026-09-04)。この数字は同ガイドラインが自ら推計したものではなく、引用している過去の報告(Lulich JP, et al. 1992)を紹介したものです。同じ段落では、英国の大規模な調査で、一次診療にかかった猫のうち腎疾患があると推定されたのはおよそ4%だったことにも触れられており、どの集団を対象にするかによって数字が大きく変わることが前置きされています(同上)。
年齢によってどのくらい違うのかを、分母まで示した報告もあります。米国の猫専門診療施設1施設で、生後6か月から20歳までを4つの年齢群に分け、各群25頭ずつを無作為に選んで最終的に86頭を評価した研究では、慢性腎臓病があると判定された猫は全体の50%(43/86頭)でした。年齢群別では、0〜4.9歳が37.5%(9/24頭)、5〜9.9歳が40.9%(9/22頭)、10〜14.9歳が42.1%(8/19頭)、15〜20歳が80.9%(17/21頭)と報告されています(Marino CL, et al. Journal of Feline Medicine and Surgery 2014;16(6):465-472・確認日 2026-09-04)。著者ら自身がこの割合を「予想より高い(higher than expected)」と述べており、無作為抽出であっても1施設から集めた猫であるため、一般の飼い猫全体の割合を表すものではないという限界も明記されています(同上)。10歳を境に急に何かが変わるというより、15歳を超えたあたりでの上がり方が大きい、という報告のされ方です。
腎臓病そのものに関する国際的な専門家グループ(IRIS)は、腎臓病が高齢の猫・犬でより多くみられる病気であるとも紹介しています(IRIS「CKD Risk Factors」・確認日 2026-09-04)。
健診では、血液検査(クレアチニンやSDMAなど、腎臓に関する項目を含む)や尿検査(尿の比重など)、血圧測定といった項目が、腎臓の状態を見る手がかりとして行われています(AAHA/AAFP「2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines」・確認日 2026-09-04)。この記事では項目の名前の紹介にとどめ、基準値や数値そのものの読み方には踏み込みません。数値の意味は、診察のなかで獣医師から直接説明を受けるのが確実です。
腎臓の病気は、日々の暮らしの中だけでは変化に気づきにくいと言われます。ISFMのガイドラインも、慢性腎臓病が高齢の猫でより多くみられることから、こうした猫はより詳細で頻繁な健康評価の対象とすべきだとしています。そのうえで、国際猫医学会(ISFM)・米国猫獣医師会(AAFP)・米国動物病院協会(AAHA)の推奨として、7歳を超えた猫には半年ごとの健康チェック(体重・ボディコンディションスコア・血圧の評価を含む)と、少なくとも年1回の検査(血液学的検査・血液生化学スクリーニング・一般的な尿検査を含む)を挙げていると紹介しています(同上)。健診でこの病気の話が出てくるのは、多くの場合こうした定期的な評価の中でのことです。
遺伝性の腎臓の病気(PKD)とは別の病気
要点: この記事で扱う慢性腎臓病と、多発性嚢胞腎(PKD)という遺伝性の腎臓の病気は、別の病気です。PKDについては別の記事で詳しく扱っています。
腎臓の病気というと、遺伝性の「多発性嚢胞腎(PKD)」を思い浮かべる方もいるかもしれません。PKDはこの記事で扱う慢性腎臓病とは別の病気で、原因遺伝子がわかっている遺伝性の病気です。ペルシャなど一部の猫種で報告が多いとされる背景や、遺伝子検査でわかることは猫の多発性嚢胞腎(PKD)|報告が多いとされる猫種と遺伝子検査でわかることにまとめています。
数値の「推移」を残す

要点: 健診で腎臓に関する数値を指摘されたら、その1回の結果だけでなく、前後の健診の結果と同じ形式で並べておくことが手がかりになります。
腎臓に関する数値は、1回だけの結果で判断できるものではなく、時間を追った変化のほうが手がかりになるとされる領域です。健診のたびに、同じ項目を同じ順番で書き残しておくと、次の健診のときに獣医師に見せられる材料になります。健診の紙をそのまま保管しておくだけでも構いませんが、うちのこ家系図の健康手帳を使えば、体重や他の記録とあわせて、日付ごとに並べて残しておけます。猫の健康診断そのものの頻度の考え方や、結果を推移で残すという考え方の基本は猫の健康診断|頻度の考え方と、結果を「推移」で残すということで詳しく紹介しています。
日々の記録:体重・水を飲む量・尿の量

要点: 体重、水を飲む量、尿の量は、家庭でも記録しやすい項目です。いつもと違う変化に気づいたら、自己判断せず獣医師にご相談ください。
健診と健診のあいだにも、家庭で残せる記録があります。体重の増減、水を飲む量、トイレの回数や尿の量といった日々の様子です。これらは症状の一覧として使うためのものではなく、「いつもと違う」という変化に気づくための手がかりとして残しておくものです。気になる変化があれば、自己判断せず、早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。体重の記録の続け方は子猫の体重の増え方と記録のしかたでも紹介しています(成猫・シニア期の体重管理にも応用できます)。
家系と親戚猫の記録

要点: 猫種によって腎臓病になりやすい傾向が示唆されているという紹介があり、家族性の病気が特定の猫種と関連づけられてきたとも紹介されています。断定はできませんが、両親猫・兄弟猫の健康状態を記録に残しておくことは、手がかりのひとつになりえます。
国際的な専門家グループ(IRIS)は、腎臓病になりやすい傾向が示唆されている猫種として、ペルシャ・アビシニアン・シャム・ラグドール・バーミーズ・ロシアンブルー・メインクーンを挙げ、家族性の病気が特定の猫種と関連づけられてきたと紹介しています(IRIS「CKD Risk Factors」・確認日 2026-09-04)。ただし、これは猫種単位の傾向の紹介であり、うちの子1頭の発症を予測するものではありません。血縁の中でこの病気がどう伝わるかについて、この記事で確認できた研究の範囲は限られており、断定はできません。
だからこそ、両親猫や兄弟猫が腎臓の数値を指摘されたことがあるかどうかは、記録として残しておく価値のある情報です。うちのこ家系図では、わかる範囲の情報から家系図を作れます。もし同じ実家(お迎え元)から生まれた親戚猫が登録されたときには、その子の記録がうちの子を見守る手がかりのひとつになるかもしれません。兄弟や親戚をどうたどるかという段取りそのものは、犬向けに書いたお迎え前と後で変わる、血縁の子を探すときの手順が猫にもそのまま当てはまります。また、健診で腎臓の数値を指摘されたあとにペット保険を検討する場合は、加入前後の告知でどこがつまずきやすいかを先に読んでおくと、残しておいた記録の出しどころがわかります。
よくある質問
Q. 健診で示された数値の意味を教えてほしいです。
この記事では検査項目の名前の紹介にとどめ、数値そのものの意味には踏み込みません。数値の読み方は、診察のなかで獣医師から直接ご確認ください。
Q. 食事はどうすればいいですか?
食事療法の要否・内容は、うちの子の状態を見ている獣医師が判断する領域です。当社はこの記事で食事の推奨はしません。
Q. 猫種で多い・少ないはありますか?
猫種によって腎臓病になりやすい傾向が示唆されているという紹介はありますが、この記事で確認できた範囲にとどまり、断定的なことは言えません。詳しくは「家系と親戚猫の記録」でご紹介しています。
Q. 何歳ごろから気をつければいいですか?
「何歳から」という明確な線引きは示されていません。ISFMのガイドラインは、慢性腎臓病が10歳を超えた猫の30〜40%以上に影響しうるという過去の報告を紹介する一方で、7歳を超えた猫には半年ごとの健康チェックと少なくとも年1回の検査という推奨も併せて紹介しています(Sparkes AH, et al. Journal of Feline Medicine and Surgery 2016;18(3):219-239・確認日 2026-09-04)。年齢群別の割合は「シニア猫に多いとされる腎臓の病気とは」で分母とあわせて紹介しています。うちの子に合った受診の間隔は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
まとめ|治療の前に、残しておけることがある
- 猫の腎臓病(慢性腎臓病)はシニア期の猫に多いとされ、国際的な専門家グループのガイドラインは10歳を超えた猫の30〜40%以上に影響しうると、過去の報告を引いて紹介している
- 遺伝性の多発性嚢胞腎(PKD)とは別の病気で、PKDは別の記事で扱っている
- 健診の数値は1回で終わらせず、同じ項目を推移で残しておくと後で役立つ
- 体重・水を飲む量・尿の量は家庭でも記録しやすく、変化があれば早めに相談する材料になる
- 猫種による傾向の紹介はあるが断定はできない。両親猫・兄弟猫の記録は手がかりのひとつになりうる
治療の話をする前に、残しておけることがあります。健診のたびに数値をひとつずつ積み重ねておくことが、いざというときの手がかりになります。
本記事は参考情報です。この記事は病気の診断・治療方針を示すものではありません。数値の意味・食事・治療方針については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。 記事中のデータは2026年9月4日時点で各資料を確認したものです。
出典・参考
- International Renal Interest Society(IRIS)「CKD Risk Factors」 (確認日 2026-09-04。ページ本文を取得し、猫種による発症傾向・家族性疾患・加齢との関係の記述をgrepで逐語照合) https://www.iris-kidney.com/ckd-risk-factors
- Sparkes AH, Caney S, Chalhoub S, et al.「ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease」(Journal of Feline Medicine and Surgery 2016;18(3):219-239・DOI )全文: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11148907/ (確認日 2026-09-04。Crossref API〈 https://api.crossref.org/works/10.1177/1098612X16631234 〉と EuropePMC API をそれぞれ1回叩いてPMCID〈PMC11148907〉を特定し、PMC全文を取得して有病率・高齢猫の健康評価に関する推奨の記述をgrepで逐語照合した。UAはChrome系の通常UA、3件ともHTTP 200。SAGEのPDFエンドポイント〈journals.sagepub.com の /doi/pdf/・/doi/epdf/〉は403だが、PMCミラーで全文が読める) https://doi.org/10.1177/1098612X16631234
- Marino CL, Lascelles BD, Vaden SL, et al.「Prevalence and classification of chronic kidney disease in cats randomly selected from four age groups and in cats recruited for degenerative joint disease studies」(Journal of Feline Medicine and Surgery 2014;16(6):465-472) (確認日 2026-09-04。PMC全文を取得〈通常UA・HTTP 200〉し、RS群の年齢群別の割合〈Table 1〉と著者自身が述べる限界の記述をgrepで逐語照合した) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4414065/
- American Animal Hospital Association(AAHA)/American Association of Feline Practitioners(AAFP)「2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines」(Quimby J, et al. Journal of Feline Medicine and Surgery, 2021, 23(3), 211-233) (確認日 2026-09-04。健診の診断項目名〈クレアチニン・SDMA・尿比重・血圧〉の確認にK11と同一資料を使用) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10812130/
この記事について
内容確認日: 2026-09-04(この日時点の一次情報にもとづいています)
本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
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