猫のはなし 更新
猫は兄弟を覚えている?再会したらわかるのか
うちのこ家系図 編集部・更新 ・内容確認日 2026-09-02

目次
離ればなれになった兄弟猫と、何年かぶりに顔を合わせたら——うちの子は「あ、あのときの」と気づくのでしょうか。
動画やSNSでは「兄弟猫の感動の再会」がよく話題になります。けれど猫の研究の世界では、この問いへの答えはまだ出ていません。むしろ専門家からは、「猫は離れた家族の記憶を早く手放していくらしい」という、少し意外な見解が示されています。
この記事では、猫行動の専門家の見解をもとに、わかっていること・わかっていないことを切り分けたうえで、猫同士を引き合わせるときの現実的な段取りまで紹介します。
専門家の見解: 「記憶は早く薄れていくようだ」

要点: 猫行動の専門家は、母猫のもとを離れた子猫はその記憶を早く失っていくようだと述べています。年月を経てから「あの子だ」と個体を思い出せるかは、確かめられていません。
ブリストル大学で猫の行動を研究するJohn Bradshaw氏は、ナショナルジオグラフィックの取材に対し、母猫から離れた子猫は母猫の記憶を早く失っていくようだと述べています。再会の場面でにおいに「なじみ」を感じることはあっても、それが家族としての認識につながるとは限らない、とも説明されています(Langley, National Geographic, 2015・確認日 2026-09-01)。
「覚えているかどうか」を科学の言葉に置き換えると、「長い空白を挟んでも、特定の個体を識別できるか」という問いになります。猫でこれを直接確かめた研究は乏しく、はいとも、いいえとも言えないのが現在地です。
前提: 猫は「群れ」の動物ではない

要点: 猫の祖先は単独で狩りをして暮らす動物だったと考えられており、群れの仲間を長く記憶し続ける必然性が、犬ほど強くなかった可能性があります。
犬の祖先であるオオカミは、群れの仲間と協力して生きる動物です。仲間を識別し、関係を記憶することは、群れで生きるための必須装備といえます。
一方、猫の祖先とされる動物(Felis silvestris lybica)は、単独で縄張りを持って狩りをする暮らしに適応してきたと考えられています。学術レビューでは、猫は「単独性の野生種(a wild solitary species)」「非社会的な祖先(an asocial progenitor)」から短い期間で家畜化された動物であり、その過程で同種に対しても人に対しても社会性を発揮する能力を獲得したと整理されています。ただし同じレビューは、猫は「社会的に義務的(socially obligate)」ではなく「社会的に柔軟(socially flexible)」であって、群れで暮らすことは生存に必須ではないとも説明しています(Finka, Animals, 2022・確認日 2026-09-02)。子猫の時期こそ母子・きょうだいで濃密に過ごしますが、成長すると独立し、ひとりで行動する時間が長くなっていきます。家族の顔ぶれを何年も覚え続ける仕組みが、猫の暮らしにはあまり求められてこなかった——そう考えると、「記憶が早く薄れる」という専門家の観察とも、つじつまが合います。
これは「猫が薄情」という話ではありません。種としての設計が、犬と違うだけのことです。
猫のコミュニケーションは「におい」でできている

要点: 猫は、体をこすりつけてにおいを共有し、鼻先を近づけて確認し合う動物です。「なじみのにおい」への反応と「血縁の記憶」は、外から区別がつきません。
猫どうしの関係を観察すると、においの果たす役割の大きさに気づきます。仲のよい猫は体をこすりつけ合って互いのにおいを交換しますし、同じ家で暮らす猫たちのあいだでは、こうしてにおいが混ざり合い、いわば「うちのメンバー共通のにおい」が保たれていくとされています。初対面の猫との挨拶も、まず鼻先を近づけて、においの確認から始まります。
つまり、再会した兄弟猫が熱心ににおいを嗅ぎ合ったとしても、それは猫として当たり前の確認行動でもあるのです。「なつかしいにおいだ」と感じているのか、「知らない猫だ」と調べているのか、外から見分ける方法はありません。
なお、ナショナルジオグラフィックの同じ記事では、野生下の雌猫が、近親交配を避けられる程度には血縁のある相手を識別できるとする研究が紹介されています(Langley, National Geographic, 2015・確認日 2026-09-01)。ただしこれは繁殖相手を選ぶ場面での血縁認識の話であり、「兄弟をなつかしむ」ような情緒的な記憶とは性質の異なるものです。
引き合わせるなら「多頭飼いの導入」と同じ手順で

要点: 兄弟であっても、猫同士の対面は「初対面の猫を迎えるとき」と同じ、段階を踏んだ進め方が基本とされています。
「血がつながっているから、すぐ仲良くなれるはず」——これは猫には通用しない期待です。猫は縄張りの動物で、自分の生活圏に現れた猫を、血縁とは無関係に警戒します。犬なら屋外の中立的な場所で引き合わせる方法がよく語られますが、猫の場合は、多頭飼いを始めるときの導入手順に沿って、屋内で段階を踏むのが現実的です。
- いきなり同じ部屋に放さない: まず部屋を分け、相手の気配や生活音に慣れる時間を取ります
- においを先に紹介する: 相手の使ったタオルやブランケットを嗅がせるなど、対面より先ににおいだけを届けます
- 仕切り越しの対面を挟む: ケージやドアの隙間越しに姿を見せ、威嚇が出ないのを確かめてから同じ空間へ
- 食事・トイレ・逃げ場は別々に: 資源を共有させないことが、猫同士の緊張を減らします
短時間の再会であっても、キャリーバッグ越しに様子を見る段階から始めると、双方の負担が減ります。うなり声や威嚇が出たら、その日は無理をせず切り上げてください。進め方に不安があるときは、かかりつけの獣医師に相談を。
「覚えていなくても、また始められる」

要点: 記憶の有無は、これからの関係を制限しません。
ここまでの内容は、少し寂しく感じられたかもしれません。けれど見方を変えれば、猫たちは過去に縛られない動物だ、ということでもあります。覚えていなくても、目の前の相手と、いまから関係を築いていくことはできます。
兄弟猫の居場所がわかっているなら、会わせるかどうかはゆっくり決めればいい。まだわからないなら、うちのこ家系図に記録を置いておく方法があります。同じ実家の子や、きょうだいかもしれない子が登録されたら、お知らせが届きます。
探し方の具体的な手順は、兄弟猫・親戚猫を調べる方法|お迎え前後で解説で紹介しています。
よくある質問
Q. 母猫は、巣立った子猫を覚えていますか?
猫の母子の長期記憶を直接確かめた研究は乏しく、確かなことは言えません。子育てが終わり、子猫が独立していくにつれて、母猫の側の反応も変わっていくとされています。
Q. ずっと一緒に暮らしている同居の兄弟なら覚えていますか?
離れずに暮らし続けている場合は、そもそも「思い出す」必要がなく、日々のにおいの共有で関係が保たれていると考えられます。この記事で扱った「わからない」は、長い年月を離れて過ごしたあとの再会についての話です。
Q. 犬は覚えているのですか?
犬では、子犬が母犬やきょうだいのにおいを識別できることを示した実験があります。ただし犬でも、長い空白を挟んだ個体の記憶については結論が出ていません。詳しくは犬は兄弟を覚えている?再会したらわかるのかをご覧ください。
まとめ|答えの出ていない問いと、これからできること
- 専門家の見解では、母猫と離れた子猫の記憶は早く薄れていくようだとされている
- 猫は単独行動を基本に進化した動物で、家族を長く記憶する必然性が犬ほど強くない可能性がある
- 猫の関係はにおいの共有で保たれており、再会時のにおい嗅ぎは血縁と無関係にも起きる
- 引き合わせるなら、多頭飼い導入と同じ段階的な手順で。無理はさせない
- 覚えているかどうかにかかわらず、関係はこれからでも築ける
「わからない」を認めたうえで、記録だけは残しておく。うちの子の家系図は、そのいちばん軽い最初の一歩です。
本記事は専門家の見解と行動学の知見を紹介する参考情報であり、個々の猫の行動や記憶を保証・断定するものではありません。猫同士の対面は安全に十分配慮し、不安があれば獣医師にご相談ください。 記事中の情報の確認日は2026年9月2日です。
出典・参考
- Langley L. "Can Cats Recognize Their Grandparents?" National Geographic, 2015-07-25. (確認日 2026-09-01。ブリストル大学の猫行動専門家 John Bradshaw氏のコメントを引用した記事であることを確認。報道記事のため帰属ルール9条に基づき「専門家見解の紹介」に限定して使用し、健康・医学的主張の唯一の根拠にはしていない) https://www.nationalgeographic.com/animals/article/150725-animals-cats-science-recognition-family
- Finka LR.(単著)"Conspecific and Human Sociality in the Domestic Cat: Consideration of Proximate Mechanisms, Human Selection and Implications for Cat Welfare." Animals (Basel). 2022;12(3):298.(PMC掲載の学術レビュー論文) (確認日 2026-09-02。猫が「単独性の野生種(a wild solitary species)」「非社会的な祖先(an asocial progenitor)」から家畜化されたこと、家畜化を経て同種・人の双方への社会性を発揮する能力を獲得したこと、ただし猫は「社会的に義務的」ではなく「社会的に柔軟」で群れ暮らしは生存に必須ではないことを記載) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8833732/
この記事について
内容確認日: 2026-09-02(最後に出典を確かめ直した日。章ごとの確認日は本文と出典の欄のとおりです)
本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
つづけて読む
兄弟猫・親戚猫を調べる方法|お迎え前後で解説
兄弟猫・親戚猫を調べる方法を、お迎え前とお迎え後に分けて解説。血統書からわかる家族関係の読み方、実家(キャッテリー)への聞き方のマナー、記録を残して心当たりを募る方法まで。血統書がない子・雑種の子にも開かれた内容です。
よむ猫のはなし猫の家系図の作り方|血統書から無料でたどる方法
猫の血統書から家系図を作る具体的な手順を解説。写真を撮って読み取る方法、3代祖のたどり方、血統書がない保護猫の場合の考え方まで。犬用だと思われがちですが、猫も無料・登録不要で試せます。
よむきょうだいと実家犬は兄弟を覚えている?再会したらわかるのか
犬は兄弟や親を覚えているのか。行動学研究の原典をもとに、わかっていること・わかっていないことを正直に整理。再会したときの様子の読み方、兄弟犬に会わせるときのポイントも紹介します。
よむ