きょうだいと実家 更新
犬は兄弟を覚えている?再会したらわかるのか
うちのこ家系図 編集部・更新 ・内容確認日 2026-09-05

目次
うちの子には、血のつながった兄弟がいます。もし再会できたら、うちの子はその子のことがわかるのでしょうか。
「犬は兄弟を覚えている」という話は、SNSや動画でもよく見かけます。感動的な再会シーンが語られることも少なくありません。
ただ、正直にお伝えします。この問いに、科学は「はい」とも「いいえ」ともはっきり答えていません。この記事では、行動学研究の原典をもとに、わかっていること・わかっていないことを整理します。
結論: 「個体として覚えている」かはわかっていないことが多い

要点: 子犬のころに、母親や兄弟のにおいを区別する力があることはわかっています。ただし、大人になって長い年月が経ったあとも「その1頭」として覚えているかどうかは、十分な証拠がありません。
先に結論からお伝えします。犬には、においを手がかりに血のつながりを認識する力があることが、研究で示されています。子犬のころは、この力がはっきり働きます。
一方で、長い年月が経ったあとに「あの兄弟だ」と個体を特定して覚えているかどうかについては、研究の証拠がまだ十分ではありません。「わかる」とも「わからない」とも言い切れない、というのが誠実な答えです。
研究でわかっていること|においによる血縁認知

要点: 生後1ヶ月ほどの子犬は、母親や兄弟のにおいを、見知らぬ犬のにおいと区別できることが実験で示されています。
この分野でよく引用される研究に、Hepper(1994年、Behavioural Processes誌)による実験があります。
この実験は、2つのうちどちらかを選ばせる試験(two choice tests)を組み合わせて行われました。論文の要旨によれば、生後4〜5.5週の子犬は兄弟と母親を見分けることができ、母犬のほうも自分の子を見分けられたと報告されています。この時期の子犬がもっとも強い反応を示したのは母親に対してで、見分けるにはにおいの手がかりだけで足りたとされています。
「◯%の子犬が母犬のにおいを選んだ」という割合の数字は、この記事には書いていません。当サイトが確認できたのは論文の要旨までで、要旨には各試験の頭数も選択率も載っておらず、全文は出版社サイト(ScienceDirect)が購読者限定のため確認できていないからです。原著に載っていると確かめられない数字を、原著の数字として紹介することはしません。
この結果から、子犬は嗅覚を使って、血のつながった母親・兄弟のにおいを、そうでない犬のにおいと区別できることがわかります。犬の嗅覚は人間よりもはるかに発達しているとされ、においは犬にとって、視覚以上に確かな手がかりになっている可能性があります。
わかっていないこと・個体差の話
要点: 母子については、2歳ごろになっても互いを見分けられたという報告があります。兄弟同士の結果には条件がついていて、別の兄弟と一緒に暮らしてきた犬だけが見分けられたとされています。
先ほどの研究では、長期間離れたあとの認識についても調べられています。要旨によれば、生後8〜12週で子と離された母犬は、2歳ごろになった我が子を見分けることができ、その子のほうも母犬を見分けられたと報告されています。
一方、兄弟同士の結果には条件がついていました。要旨では、兄弟を見分けられたのは「(試験相手ではない)別の兄弟と一緒に暮らしてきた犬」で、1頭だけで暮らしていた犬は兄弟を見分けられなかったとされています。著者は、母子の認識と兄弟の認識は違う仕組みで成り立っているのではないかと述べています。
この「違う仕組み」という見方は、同じ著者らがのちに書いた血縁認知の総説でも繰り返されています。Hepper と Cleland(1998-1999年、Genetica誌)は、"studies on kin recognition in the domestic dog suggest that all kin are not recognised by the same process but different classes of kin, parents, siblings may well be recognised using different means."(イエイヌの血縁認知の研究は、すべての血縁が同じ過程で認識されるのではなく、親・兄弟といった血縁の種類ごとに異なる手段で認識されている可能性を示唆する)と述べています(確認日 2026-09-05)。
さらにこの総説は、認識の仕組みそのものについて、"In mammals there is no evidence to suggest that recognition (the processing of the cue) is under genetic control but rather is the result of experience, learning about related individuals during development."(哺乳類では、認識——手がかりの処理——が遺伝的な制御下にあることを示す証拠はなく、むしろ発達の過程で血縁個体について学習した経験の結果である)としています(同上)。血縁を見分ける力が、生まれつき組み込まれた「血の呼び声」ではなく、育つ過程での学習によるものだとすれば、1994年の実験で「兄弟と一緒に暮らしてきた犬だけが兄弟を見分けられた」という結果が出たことにも、説明がつきます。
つまり「親子」と「兄弟」では、報告されている中身そのものが違います。兄弟については、暮らし方——兄弟と一緒に育ってきたかどうか——が結果を分けていました。これは、離れて育った兄弟犬に絆がないという意味ではありません。この1件の研究で条件つきの結果が出ている、というだけのことです。個体差も大きく関わるテーマだと考えられます。
再会した犬たちに何が起きているのか

要点: 再会したときに見られる挨拶行動は、血縁の有無にかかわらず、犬同士の一般的なコミュニケーションでもあります。
久しぶりに顔を合わせた犬同士が、お互いの体や顔のにおいを熱心に嗅ぎ合う様子を見ると、「懐かしがっている」ように感じられるかもしれません。
ただし、におい嗅ぎは、初対面の犬同士でも見られる一般的な挨拶行動です。「懐かしそうに見える」行動と、「血縁を記憶していることによる行動」を、外から見分けるのは簡単ではありません。
再会の様子を「特別な感動の証拠」と決めつけず、その場でその子たちがどう過ごしているかを、ありのままに見てあげることも、大切な視点です。
兄弟犬に会わせるときのポイント

要点: 血縁の有無にかかわらず、初めて顔を合わせる犬同士と同じ手順で、無理のない対面を心がけます。
兄弟犬と会わせる機会があるときは、次のような点に気をつけてみてください。
- 中立的な場所で、リードをつけたまま: どちらかの縄張り(自宅など)ではなく、屋外の中立的な場所から始めると、緊張が少なくなります
- 双方の犬の様子をよく見る: 耳や尻尾、体の緊張具合を観察し、どちらかが怖がっている様子があれば無理に近づけない
- 短時間から様子を見る: 最初は数分程度にとどめ、落ち着いていれば少しずつ時間を延ばす
- 相性が合わなくても、それは自然なこと: 血のつながりがあっても、犬同士の相性はまた別の話です
「兄弟だから仲良くなるはず」と決めつけず、目の前のその子たちの様子を見ながら進めることが、いちばんの近道です。生まれてからずっと兄弟2頭を一緒に育てている場合の工夫は、兄弟2頭を一緒に育てるときの工夫でも紹介しています。
「覚えているか」より「これから一緒に思い出を作れるか」

要点: 過去の記憶がどうであれ、これから一緒に時間を重ねていくことはできます。
ここまで見てきたとおり、「兄弟犬を覚えているか」という問いに、はっきりした答えはまだありません。
でも、それは寂しいことではないと思います。覚えているかどうかにかかわらず、これから兄弟犬や親戚犬と、新しく時間を重ねていくことはできるからです。
うちのこ家系図では、同じ実家の子や兄弟かもしれない子が登録されたら、お知らせが届く見守り機能があります。急いで探さなくても、家系図を置いておくだけ。それが、これから何かが始まるかもしれない窓口になります。
兄弟犬・親戚犬を調べる具体的な方法は、兄弟犬の探し方|血統書の裏面の番号・実家(犬舎)への聞き方と里帰りで詳しく解説しています。実際に会えることになったら、当日までの準備や距離の取り方は兄弟犬に会いに行く前に|再会・オフ会の準備と、当日の距離感で紹介しています。
よくある質問
Q. 親犬は子犬を覚えていますか?
Hepper(1994年)の研究では、長期間離れて暮らしたあとでも、母犬と子犬が互いを認識していたと報告されています。ただし、これは実験条件下での結果であり、すべてのケースにあてはまると断定するものではありません。
Q. 血縁を見分ける力は、生まれつき備わっているのですか?
Hepper と Cleland(1998-1999年)の総説は、哺乳類では血縁の認識が遺伝的な制御下にあるという証拠はなく、発達の過程で血縁個体について学習した経験の結果だと考えられる、としています(確認日 2026-09-05)。「血のつながりを本能で感じ取る」という説明より、「一緒に過ごした経験で覚える」という説明のほうが、現時点の研究には近いようです。
Q. 何ヶ月一緒に過ごすと覚えますか?
はっきりした基準は、研究では示されていません。犬種や個体差、離れて過ごした期間の長さなど、複数の要因が関わると考えられます。現時点で明確な「何ヶ月」という答えを出すことはできません。
Q. 猫の場合はどうですか?
猫の血縁認知については、犬以上に研究の蓄積が限られています。猫も血縁のある個体のにおいに反応するとされる報告はありますが、犬のように長期記憶を検証した研究は十分ではありません。断定的なことは言えない、というのが現時点での正直な答えです。
まとめ|わかっていないことも、正直に受け止める
- 子犬のころは、においで母親・兄弟を区別できることが研究で示されている
- 母犬と子犬の認識は、長期間離れたあとも保たれるという報告がある
- 兄弟同士の長期的な認識は条件つきの報告で、別の兄弟と暮らしてきた犬は見分けられ、1頭で暮らしていた犬は見分けられなかった
- 血縁を見分ける力は、遺伝で決まっているというより、発達の過程での学習の結果だと考えられている
- 再会時のにおい嗅ぎ行動は、血縁の有無にかかわらず見られる一般的な挨拶でもある
- 会わせるときは、血縁にかかわらず「初対面と同じ手順」で無理をさせない
「覚えているか」に、まだはっきりした答えはありません。それでも、これから一緒に過ごす時間は、これから作っていけます。うちの子の家系を記録しておくことは、そのための小さな準備でもあります。
本記事は行動学研究の紹介を目的とした参考情報です。個体の行動・記憶について断定するものではありません。犬同士を対面させる際は、双方の安全に十分ご配慮ください。 Hepper 1994 の要旨は2026年9月4日、Hepper & Cleland 1998-1999 の要旨は2026年9月5日に確認したものです。
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レオ
ココの父
ミント
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ココ
ゆき さん
お父さんが同じ
発見済ショコラ
まめ さん
親戚が登録されたら、お知らせ
画面はイメージです(架空の子の見本)。
出典・参考
- Hepper PG. "Long-term retention of kinship recognition established during infancy in the domestic dog." Behavioural Processes, 1994, 33(1-2), 3-14. (確認日 2026-09-04。要旨に載っている記述だけを本文の根拠にしています。全文は出版社サイトが購読者限定のため確認できていません) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24925236/
- Hepper PG, Cleland J. "Developmental aspects of kin recognition." Genetica, 1998-1999, 104(3), 199-205. https://doi.org/10.1023/a:1026477724836 (確認日 2026-09-05) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10386383/
この記事について
内容確認日: 2026-09-05(最後に出典を確かめ直した日。章ごとの確認日は本文と出典の欄のとおりです)
本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。
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