きょうだいと実家

犬は兄弟を覚えている?再会したらわかるのか

内容確認日 2026-09-01うちのこ家系図 読みもの

再会した犬同士が挨拶する様子。においを確かめ合う行動は血縁の有無にかかわらず見られる
目次
  1. 1結論: 「個体として覚えている」かはわかっていないことが多い
  2. 2研究でわかっていること|においによる血縁認知
  3. 3わかっていないこと・個体差の話
  4. 4再会した犬たちに何が起きているのか
  5. 5兄弟犬に会わせるときのポイント
  6. 6「覚えているか」より「これから一緒に思い出を作れるか」
  7. 7よくある質問
  8. 8まとめ|わかっていないことも、正直に受け止める

うちの子には、血のつながった兄弟がいます。もし再会できたら、うちの子はその子のことがわかるのでしょうか。

「犬は兄弟を覚えている」という話は、SNSや動画でもよく見かけます。感動的な再会シーンが語られることも少なくありません。

ただ、正直にお伝えします。この問いに、科学は「はい」とも「いいえ」ともはっきり答えていません。この記事では、行動学研究の原典をもとに、わかっていること・わかっていないことを整理します。

結論: 「個体として覚えている」かはわかっていないことが多い

要点: 子犬のころに、母親や兄弟のにおいを区別する力があることはわかっています。ただし、大人になって長い年月が経ったあとも「その1頭」として覚えているかどうかは、十分な証拠がありません。

先に結論からお伝えします。犬には、においを手がかりに血のつながりを認識する力があることが、研究で示されています。子犬のころは、この力がはっきり働きます。

一方で、長い年月が経ったあとに「あの兄弟だ」と個体を特定して覚えているかどうかについては、研究の証拠がまだ十分ではありません。「わかる」とも「わからない」とも言い切れない、というのが誠実な答えです。

研究でわかっていること|においによる血縁認知

要点: 生後1ヶ月ほどの子犬は、母親や兄弟のにおいを、見知らぬ犬のにおいと区別できることが実験で示されています。

この分野でよく引用される研究に、Hepper(1994年、Behavioural Processes誌)による実験があります。

生後4〜5.5週の子犬に、母犬のにおいがついた布と、見知らぬ同年代・同犬種のメス犬のにおいがついた布を並べて見せたところ、試験した子犬のうち82%が母犬のにおいの布を選んだと報告されています。同じように、兄弟犬のにおいがついた布と、血のつながりのない同年代・同犬種の犬のにおいがついた布を並べたところ、試験した子犬のうち70%が兄弟犬のにおいの布を選びました(確認日 2026-09-01)。なお、この実験に参加した子犬の頭数(割合の分母)は、当サイトが確認できた論文要旨には記載がありません。

この結果から、子犬は嗅覚を使って、血のつながった母親・兄弟のにおいを、そうでない犬のにおいと区別できることがわかります。犬の嗅覚は人間よりもはるかに発達しているとされ、においは犬にとって、視覚以上に確かな手がかりになっている可能性があります。

わかっていないこと・個体差の話

要点: 母親については長期間離れたあとも認識が保たれるという報告がありますが、兄弟同士については、長期間離れたあとの認識を裏づける証拠が十分ではありません。

先ほどの研究では、長期間離れたあとの認識についても調べられています。長期にわたって母犬と離れて暮らしたあとでも、母犬・子犬どうしが互いを認識していた、という結果が報告されています。

一方で、同じ研究では、長期間離れて暮らした兄弟同士が互いを認識しているかどうかについては、それを裏づけるだけの十分な証拠は得られなかったとされています(確認日 2026-09-01)。

つまり、「親子の絆」と「兄弟の絆」では、研究で示されている確からしさに差があるということです。これは、兄弟犬同士に絆がない、という意味ではありません。単に、それを裏づける研究がまだ少ない、ということです。個体差も大きく関わるテーマだと考えられます。

再会した犬たちに何が起きているのか

要点: 再会したときに見られる挨拶行動は、血縁の有無にかかわらず、犬同士の一般的なコミュニケーションでもあります。

久しぶりに顔を合わせた犬同士が、お互いの体や顔のにおいを熱心に嗅ぎ合う様子を見ると、「懐かしがっている」ように感じられるかもしれません。

ただし、におい嗅ぎは、初対面の犬同士でも見られる一般的な挨拶行動です。「懐かしそうに見える」行動と、「血縁を記憶していることによる行動」を、外から見分けるのは簡単ではありません。

再会の様子を「特別な感動の証拠」と決めつけず、その場でその子たちがどう過ごしているかを、ありのままに見てあげることも、大切な視点です。

兄弟犬に会わせるときのポイント

要点: 血縁の有無にかかわらず、初めて顔を合わせる犬同士と同じ手順で、無理のない対面を心がけます。

兄弟犬と会わせる機会があるときは、次のような点に気をつけてみてください。

  1. 中立的な場所で、リードをつけたまま: どちらかの縄張り(自宅など)ではなく、屋外の中立的な場所から始めると、緊張が少なくなります
  2. 双方の犬の様子をよく見る: 耳や尻尾、体の緊張具合を観察し、どちらかが怖がっている様子があれば無理に近づけない
  3. 短時間から様子を見る: 最初は数分程度にとどめ、落ち着いていれば少しずつ時間を延ばす
  4. 相性が合わなくても、それは自然なこと: 血のつながりがあっても、犬同士の相性はまた別の話です

「兄弟だから仲良くなるはず」と決めつけず、目の前のその子たちの様子を見ながら進めることが、いちばんの近道です。

「覚えているか」より「これから一緒に思い出を作れるか」

要点: 過去の記憶がどうであれ、これから一緒に時間を重ねていくことはできます。

ここまで見てきたとおり、「兄弟犬を覚えているか」という問いに、はっきりした答えはまだありません。

でも、それは寂しいことではないと思います。覚えているかどうかにかかわらず、これから兄弟犬や親戚犬と、新しく時間を重ねていくことはできるからです。

うちのこ家系図では、同じ実家の子や兄弟かもしれない子が登録されたら、お知らせが届く見守り機能があります。急いで探さなくても、家系図を置いておくだけ。それが、これから何かが始まるかもしれない窓口になります。

兄弟犬・親戚犬を調べる具体的な方法は、兄弟犬・親戚犬を調べる方法|お迎え前後で解説で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 親犬は子犬を覚えていますか?

Hepper(1994年)の研究では、長期間離れて暮らしたあとでも、母犬と子犬が互いを認識していたと報告されています。ただし、これは実験条件下での結果であり、すべてのケースにあてはまると断定するものではありません。

Q. 何ヶ月一緒に過ごすと覚えますか?

はっきりした基準は、研究では示されていません。犬種や個体差、離れて過ごした期間の長さなど、複数の要因が関わると考えられます。現時点で明確な「何ヶ月」という答えを出すことはできません。

Q. 猫の場合はどうですか?

猫の血縁認知については、犬以上に研究の蓄積が限られています。猫も血縁のある個体のにおいに反応するとされる報告はありますが、犬のように長期記憶を検証した研究は十分ではありません。断定的なことは言えない、というのが現時点での正直な答えです。

まとめ|わかっていないことも、正直に受け止める

  • 子犬のころは、においで母親・兄弟を区別できることが研究で示されている
  • 母犬と子犬の認識は、長期間離れたあとも保たれるという報告がある
  • 兄弟同士の長期的な認識については、裏づける証拠が十分ではない
  • 再会時のにおい嗅ぎ行動は、血縁の有無にかかわらず見られる一般的な挨拶でもある
  • 会わせるときは、血縁にかかわらず「初対面と同じ手順」で無理をさせない

「覚えているか」に、まだはっきりした答えはありません。それでも、これから一緒に過ごす時間は、これから作っていけます。うちの子の家系を記録しておくことは、そのための小さな準備でもあります。


本記事は行動学研究の紹介を目的とした参考情報です。個体の行動・記憶について断定するものではありません。犬同士を対面させる際は、双方の安全に十分ご配慮ください。 記事中の研究情報は2026年9月1日時点で確認したものです。

出典・参考

  • Hepper PG. "Long-term retention of kinship recognition established during infancy in the domestic dog." Behavioural Processes, 1994, 33(1-2), 3-14. (確認日 2026-09-01) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24925236/

この記事について

内容確認日: 2026-09-01(この日時点の一次情報にもとづいています)

本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。