犬種と健康

犬の尿路結石|成分ごとに違う名前と、名前が挙がる犬種

内容確認日 2026-09-07うちのこ家系図 読みもの

犬の尿路結石。成分ごとに違う名前と、名前が挙がる犬種を一次資料から解説
目次
  1. 1「尿路結石」という言葉が指すもの
  2. 2成分ごとに、それぞれ別の名前がある
  3. 3成分ごとに、名前の挙がる犬種が違う
  4. 4性別で、報告のされ方が違うとされること
  5. 5健診で確認される項目
  6. 6犬種ごとの詳しい報告は専用記事へ
  7. 7家系でできること
  8. 8よくある質問
  9. 9まとめ|総称としての「尿路結石」

「尿路結石」という言葉は、ひとつの病気の名前ではありません。尿の通り道にできる結石の、いくつもの成分をまとめて呼ぶための総称です。この記事では、成分ごとの名前の違いと、名前の挙がる犬種がどう違うかを、一次資料の数字にもとづいて整理します。

「尿路結石」という言葉が指すもの

要点: MSD獣医マニュアルは、「尿路結石症」という語を「尿路のなかに結石が存在することを指す一般的な用語」と定義しています。結石は腎臓・尿管・膀胱・尿道など、尿路のどこにでもできうるとされています。

MSD獣医マニュアルは、「尿路結石症」という語を「尿路のなかに結石(stoneまたはcalculusとも呼ばれる)が存在することを指す一般的な用語」と定義しています。結石は、腎臓(腎結石)、尿管(尿管結石)、膀胱(膀胱結石)、尿道(尿道結石)など、尿路のどこにでもできうるとされています(MSD Veterinary Manual)。日本語では「尿石症」と呼ばれることもあります。

つまり「尿路結石」は、できた場所によっても、含まれる成分によっても、呼び名が変わる言葉だということです。次の見出しでは、そのうち成分のほうを見ていきます。

成分ごとに、それぞれ別の名前がある

要点: MSD獣医マニュアルの一覧表には、結石に含まれる鉱物ごとに固有の名前と化学式がついています。ストルバイト、シュウ酸カルシウム(一水和物のホエウェライトと二水和物のウェデライト)、尿酸塩、シスチンなどが、それぞれ別の項目として並んでいます。

MSD獣医マニュアルには、結石に含まれる鉱物ごとの名前をまとめた一覧表(Urolith Types)があります。鉱物名・化学式・化学名の3列でできており、代表的な成分は次のように整理されています(MSD Veterinary Manual)。

ストルバイトは、化学名を「リン酸アンモニウムマグネシウム六水和物」といいます。マグネシウム・アンモニウム・リン酸に、6つの水分子が結びついた形の鉱物です。表の中では、この1行だけで1つの成分として扱われています。

シュウ酸カルシウムには、表の上で別々の行が与えられています。一水和物には「ホエウェライト」、二水和物には「ウェデライト」という、それぞれ違う鉱物名がついています。日本語では両方まとめて「シュウ酸カルシウム」と呼ばれることが多いのですが、資料の上では水分子の数によって別の鉱物として区別されている、ということです。

**尿酸塩(ユーレート)**も、複数の行に分かれています。尿酸塩そのもののほかに、アンモニウムが結びついた「アンモニウム尿酸塩」、ナトリウムが結びついた「ナトリウム尿酸塩一水和物」が、それぞれ別の項目として並んでいます。

シスチンは、アミノ酸の名前がそのまま鉱物名にも化学名にもなっている成分です。表の中では、鉱物名も化学名も同じ「シスチン」と記載されています。

このほかにも、表にはハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの水酸化物の形)、シリカ、キサンチンといった名前が並んでいます(同上)。

同じ資料は、多くの結石が1種類の鉱物だけでできている一方で、複数の鉱物が混ざったものや、層になった複合結石になることもあると説明しています。複合結石では、中心部と外側の層とで対応している条件が違うとされています(同上)。

なお、こうした「成分の名前」は、結石の中身がその鉱物だけでできているという意味ではありません。後述するカナダの解析センターの論文では、ひとつの鉱物が結石の70%以上を占めていた場合に、その鉱物の名前で分類する、という基準が使われていました(Houston & Moore, 2009)。成分の名前は、こうした基準のもとでつけられた分類名だということです。

同じ論文は、シスチン、キサンチン、シリカ、リン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、乾燥固化血液結石(DSBC)といった成分について、報告例が比較的少なかったとも記しています(同上)。表に名前が載っていることと、実際に多く報告されることは別だということです。

成分ごとに、名前の挙がる犬種が違う

ラグの上に少し離れて座る、長毛のシーズーと、ソルト&ペッパーのミニチュア・シュナウザー

要点: 米ミネソタ大学の結石解析センターは、2025年の1年間だけで世界から68,657件の犬の結石が提出されたと公表しています。1998年から2008年にカナダの結石解析センターへ提出された犬の膀胱結石40,637件を扱った論文は、小型の純血種5犬種で提出された結石全体のおよそ50%を占めていたと報告しています。

米ミネソタ大学の結石解析センターは、2025年の1年間だけで世界68,657件の犬の結石が提出されたと公表しており、そのうち76%が北米からの提出だとしています(Minnesota Urolith Center)。いまも年間数万件規模での分析が続いているテーマだということがわかります。

より詳細な犬種別・性別の内訳としては、1998年から2008年にかけてカナダの獣医結石解析センター(CVUC)に提出された犬の膀胱結石40,637件を対象にした論文があります(Houston & Moore, 2009)。この解析センターは1998年2月に開設され、10年間で5万件を超える提出を定量的に分析してきたとされています。その5万件を超える提出のうち、犬が40,637件(78%)、猫が11,353件(22%)でした(同上)。

成分の内訳としては、提出された結石40,637件のうちおよそ85%にあたる34,374件が、シュウ酸カルシウムかストルバイトに分類されたと報告されています(Houston & Moore, 2009)。また、この10年間で、犬ではストルバイトの提出数が減り、シュウ酸カルシウムの提出数が増えたとされています(同上)。

この論文は、混血犬が提出のうち最も多かった(9,832件・40,637件のうち24%)一方で、小型の純血種——シーズー、ミニチュア・シュナウザー、ビション・フリーゼ、ラサ・アプソ、ヨークシャー・テリア——が多く見られたとしています。そして、この5犬種で提出された結石全体のおよそ50%を占めていたと報告しています(同上)。なお、表2に載っているこの5犬種の提出数を合計すると19,452件で、40,637件のうちの47.9%にあたります(この合計と割合は本記事の計算です)。

この論文は、これら5犬種のいずれについても症例が1,000件以上あったとしています。さらに、250件以上の症例があった犬種(トイ・プードル、ジャック・ラッセル・テリア、マルチーズ、ペキニーズ、ポメラニアン、パグ)を加えると、小型犬種で見られた結石全体のおよそ60%を占めていた、とも報告しています(同上)。

同じ論文には、犬種と性別ごとに結石の成分をまとめた表があります。たとえばシーズーは、牡1,838件のうち1,403件(76.3%)がシュウ酸カルシウム、牝4,025件のうち2,656件(66.0%)がストルバイトでした。ヨークシャー・テリアの牡は899件のうち748件(83.2%)が、ラサ・アプソの牡は1,007件のうち894件(88.8%)がシュウ酸カルシウムでした(同上。いずれの割合も本記事の計算です)。

この論文はさらに、ダルメシアンの牡が尿酸塩の結石のリスクがもっとも高く、829件のうち794件(原文の表記では96%)だったとも報告しています(同上。原文の96%という表記に対し、829件のうち794件を割ると95.8%になります。この計算は本記事によるものです)。一方で同じダルメシアンでは、ストルバイトは847件のうち9件(1%)、シュウ酸カルシウムは847件のうち7件(0.8%)しか確認されていません(Houston & Moore, 2009)。成分の偏り方が犬種によってどれだけ違うかが、同じ表の中で見て取れます。

これらの数字は、1998年から2008年にカナダの結石解析センターへ提出された結石という条件のもとでの集計です。日本の犬全体にそのまま当てはめられる数字ではなく、また「提出された結石のうちその犬種が占める割合」であって、その犬種が結石になりやすいという発症率を示す数字でもありません。

性別で、報告のされ方が違うとされること

要点: 同じ論文は、この研究における犬のストルバイトの提出例では、牝が牡を16.4対1で上回ったと報告しています。

同じ論文は、ストルバイトの結石について「この研究における犬のストルバイト提出例では、牝が牡を16.4対1で上回った」と報告しています(Houston & Moore, 2009)。参考までに、犬種別の表(混血犬と上位6犬種)でストルバイトに分類された結石は、合計11,682件と記載されています(同上)。

同じ論文は、全体の傾向として、ストルバイトの結石は牝の犬にもっとも多く、シュウ酸カルシウムの結石は牡の犬にもっとも多かったとも記しています(同上)。ただしこれは、提出された結石をどう分類したかの集計であって、性別によって発症の有無が決まるという意味ではありません。

年齢については、シュウ酸カルシウムの結石はストルバイトよりも高齢の動物に多い傾向があるとされていますが、具体的な年齢の数字は示されていません(同上)。

健診で確認される項目

玄関の上がりがまちで、中型の短毛ミックス犬に布製の胴輪を着ける女性と、床に置かれたリード

要点: 健診では、尿検査という項目が、結石に関わる情報の一つとして挙がります。

健診では、尿検査という項目が、結石に関わる情報の一つとして挙がります。この記事で見てきたように、結石は成分によって呼び名が変わるため、もし検査や解析の結果に成分の名前が出てきた場合は、その名前をそのまま控えておくと、後から見返すときの手がかりになります。

健診の頻度の目安や結果の残し方については、犬の健康診断は年に何回?頻度の目安と、結果の残し方で解説しています。

犬種ごとの詳しい報告は専用記事へ

要点: 特定の犬種について、結石の成分の傾向が語られることがあります。それぞれの犬種で報告されている内容は、専用記事にまとめています。

上の表で名前の挙がった犬種のうち、ミニチュア・シュナウザーとビション・フリーゼについては、報告されている内容を専用の記事にまとめています。ミニチュアシュナウザーの遺伝病|高脂血症と結石ビションフリーゼのかかりやすい病気と遺伝病|ひざ・目・尿路と寿命・家系での備えをあわせてご覧ください。

家系でできること

キッチンで冷蔵庫の扉に無地のメモを留める女性と、そばの床に座って見上げる中型の短毛ミックス犬

健診の尿検査の結果を記録として残しておくことは、うちの子の体調の変化に気づく手がかりになります。うちのこ家系図には、健診の結果や体重の記録を日付とともに書き残せます。両親犬・兄弟犬について、結石に関する情報がわかっている場合は、その記録もあわせて残しておくと役立つことがあります。

よくある質問

Q. 「尿石症」と「尿路結石」は同じ意味ですか?

日本語での使い分けを述べた一次資料の記述は見つかっていません。この記事では「尿路結石」の表記で統一しています。

Q. 成分の名前がいくつもあるのはなぜですか?

MSD獣医マニュアルの一覧表が、鉱物名・化学式・化学名という3つの列で成分を整理しているためです。同じ「シュウ酸カルシウム」でも、水分子の数によってホエウェライトとウェデライトという別の鉱物名がついています。

Q. 食事や水分についてはどう考えればいいですか?

この記事では、成分の名前や犬種ごとの報告の違いという範囲にとどめており、食事や水分に関する内容は扱っていません。気になる場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

まとめ|総称としての「尿路結石」

  • 「尿路結石」はひとつの病気ではなく、成分ごとに固有の化学名・鉱物名がついた結石の総称
  • 代表的な成分はストルバイト、シュウ酸カルシウム(一水和物のホエウェライト・二水和物のウェデライト)、尿酸塩、シスチンなど
  • ひとつの鉱物が結石の70%以上を占めていた場合に、その鉱物の名前で分類するという基準が使われた論文がある
  • 提出された結石40,637件のうち、およそ85%にあたる34,374件がシュウ酸カルシウムかストルバイトに分類されたと報告されている(Houston & Moore, 2009)
  • 1998〜2008年にカナダで提出された犬の膀胱結石40,637件について、小型の純血種5犬種で全体のおよそ50%を占めていたと報告されている(表から合計すると19,452件・47.9%=本記事の計算)
  • ストルバイトは牝が牡を16.4対1で上回ったと報告されている
  • これらの数字は特定の時期・地域で提出された結石の割合であり、発症率を示すものではない
  • 健診の尿検査という項目名を知っておくことと、犬種ごとの詳しい報告は専用記事に委ねている

成分ごとに違う名前があるということを知っておくだけでも、健診の結果を読むときの手がかりになります。


本記事は参考情報です。この記事は病気の診断・治療方針を示すものではありません。気になる様子があれば、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。 記事中のデータは2026年9月7日時点でMSD獣医マニュアル・NCBI(PMC)・Minnesota Urolith Centerの各資料を確認したものです。

出典・参考

  • MSD Veterinary Manual(PROFESSIONAL VERSION)"Overview of Urolithiasis in Small Animals"(Laura Van Vertloo, DVM, MS, DACVIM/Iowa State University/peer reviewed by Joyce Carnevale, DVM, DABVP/Full Review: May 2025) (確認日 2026-09-07。定義段落・Urolith Types表・単一/複合結石の説明段落を確認。Treatment節・Diagnosis節・Etiology節の要因列挙・Clinical Findings節は使用していない) https://www.msdvetmanual.com/urinary-system/urolithiasis-in-small-animals/overview-of-urolithiasis-in-small-animals
  • Houston DM, Moore AE. "Canine and feline urolithiasis: Examination of over 50 000 urolith submissions to the Canadian Veterinary Urolith Centre from 1998 to 2008." Can Vet J. 2009;50(12):1263-1268. (確認日 2026-09-07。Abstract・Materials and methods・Results・Table2を確認し分子分母を検算。Discussion節の原因論・機序の説明は使用していない) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2777289/
  • Minnesota Urolith Center(University of Minnesota)"2025 Global Urolith Data"(generated February 2026) (確認日 2026-09-07。2025 Minnesota Urolith Center Global Data. generated by Minnesota Urolith Center, February 2026, z.umn.edu/2025GlobalUrolith, Date Accessed 2026-09-07) https://z.umn.edu/2025GlobalUrolith

この記事について

内容確認日: 2026-09-07(この日時点の一次情報にもとづいています)

本記事は一般的な参考情報であり、獣医療行為やその代替ではありません。うちの子の体調で気になることがあるときは、かかりつけの獣医師にご相談ください。