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犬のクッシング症候群とは?症状・なりやすい犬種と治療の概要・費用
公開 /更新 /2026 年 10 月時点の情報書いた人・確かめた人:うちのこ家系図 編集部

目次
犬のクッシング症候群は、副腎(ホルモンを出す体の部分)から出るホルモンが多い状態が続く、中高齢の犬にみられる病気です(MSD獣医マニュアル。米国・カナダでは Merck Veterinary Manual の名前)。
主な様子は、水を多く飲む、おしっこが増える、食欲が増える、お腹がふくらむ、毛が抜ける、などです。病院へ行く目安は、5つ目の章にまとめています。
犬のクッシング症候群とは?
クッシング症候群は、副腎から出るホルモンが、多い状態が続くことで起こります(MSD獣医マニュアル)。手紙が相手に届いて仕事を頼むように、ホルモンは体の中で合図を送る物質です。
出るのは副腎の外側(皮質)で、そのホルモンの名前はコルチゾールです。
原因は大きく2つの型に分かれます。報告された例の80〜85%が下垂体性、10〜15%が副腎性です(MSD獣医マニュアル)。
下垂体性は、脳の下垂体にできた腫瘍(できもの)が、ACTHというホルモンを出す型です。ACTHは、副腎を動かす合図のホルモンです。
副腎性は、副腎にできた腫瘍が、自分でホルモンを出す型です。
副腎を工場、下垂体をその司令塔にたとえると、下垂体性は司令塔が指示を出しすぎる型です。副腎性は、指示がなくても工場が自分で動く型です。

この病気は、どの犬種・大きさの犬にも起こりえます(MSD獣医マニュアル)。
この2つとは別に、炎症や免疫の病気を抑えるために使うステロイドの薬を、長く使ったことで起こる型(医原性)もあります(MSD獣医マニュアル)。医原性は、治療に使った薬がもとで起こるという意味です。症状は、医原性でも同じような形で出るとされています(MSD獣医マニュアルの下垂体性の頁)。
ステロイドの薬を長く使っている場合、急にやめると、かえって具合が悪くなることがあるとされています(MSD獣医マニュアル)。飲んでいる薬は、自己判断でやめたり減らしたりせず、かかりつけの獣医師に相談します。
参考:MSD獣医マニュアル『Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)リンク
参考:MSD獣医マニュアル『Corticosteroids in Animals』(2025)リンク
参考:MSD獣医マニュアル『Cushing Disease (Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)リンク
主な症状と家で気づく形
犬のクッシング症候群では、水を多く飲む、おしっこが増える、食欲が増える、お腹がふくらむ、毛が抜ける、といった様子がよくみられます(MSD獣医マニュアル)。
症状は犬によって違います(MSD獣医マニュアル)。
犬のクッシング症候群でよくみられる症状
| 症状 | 家で気づく形 |
|---|---|
| 水をよく飲む・尿が多い(多飲多尿) | 水を多く飲む。おしっこの量や回数が増える |
| 食べる量が増える(多食) | 食欲が増える |
| お腹が垂れる | お腹が垂れて、ふくらんで見える |
| 息が荒い(パンティング) | 口を開けて、ハアハアと息をする |
| 筋肉が落ちる | 体の肉づきが落ちる |
| 皮膚の変化 | 毛が抜ける。皮膚が薄くなる。皮膚に細菌の感染(膿皮症)が起きる |
出典:MSD獣医マニュアル『Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)
見た目の症状のほかに、全身の血圧が高くなる(高血圧)こともあります(MSD獣医マニュアル)。血圧は、動物病院で測って分かる値です。
原因の型となりやすい犬種
原因の型によって、報告される犬の大きさに傾向があります(MSD獣医マニュアル)。
原因の2つの型と大きさの傾向
| 型 | 大きさの傾向 |
|---|---|
| 下垂体性 | 報告の多くが小型の犬種 |
| 副腎性 | 大きめの犬に多い傾向 |
出典:MSD獣医マニュアル『Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)
表は報告の傾向で、この病気そのものは、どの犬種・大きさの犬にも起こりえます(MSD獣医マニュアル)。症状は、下垂体性でも副腎性でも変わらないとされています(MSD獣医マニュアルの下垂体性の頁)。
MSD獣医マニュアルの下垂体性の頁は、かかりやすい犬種として、プードル(とくにミニチュア)・ダックスフンド・ボクサー・ボストン・テリア・ヨークシャー・テリア・スタッフォードシャー系のテリアを挙げています。
参考:MSD獣医マニュアル『Cushing Disease (Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)リンク
ある保険会社の白書では、次の3犬種の頁で、この病気が「他犬種に比べ罹りやすい疾患」の表に入っていました。表の「請求割合」は、保険金の支払いがあった犬の割合です。
保険会社の白書で、この病気が「他犬種に比べ罹りやすい疾患」の表に入った3犬種
| 犬種 | 対象の犬(0〜12歳) | 請求頭数 | 請求割合(その犬種) | 請求割合(犬全体) |
|---|---|---|---|---|
| ミニチュア・ダックスフンド | 46,144頭 | 262頭 | 0.6% | 0.4% |
| ヨークシャー・テリア | 18,359頭 | 116頭 | 0.6% | 0.4% |
| マルチーズ | 14,041頭 | 87頭 | 0.6% | 0.4% |
出典:アニコム『家庭どうぶつ白書2025』第2部(2-2-14・2-2-23・2-2-29)

白書の30犬種の頁のうち、この病気が表に入ったのは3犬種でした。表に入る条件があるので、入っていない犬種がなりにくいという意味ではありません。
参考:アニコム『家庭どうぶつ白書2025』第2部(2025)リンク
診断と治療の概要・費用の目安
診断は、様子の聞き取りから検査まで、何段かに分けて進みます(MSD獣医マニュアル)。
まず疑い、次に確かめる検査をして、多くの場合はさらに原因の型を見分ける検査をします。ふるいにかけて分けるように、ふるい分けの検査は、疑いのある犬がこの病気かどうかを確かめる検査です。検査の名前は次のとおりです。
診断で使われる主な検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 血液検査(ALP) | 血液検査でわかる数値の1つ(ALP)の上昇が、犬で最もよくみられる検査の異常 |
| ホルモンの反応を調べる検査(抑制試験) | この病気をふるい分ける検査として第一に選ばれる検査 |
| ACTH刺激試験 | もう一つのふるい分けの検査 |
| お腹の超音波検査やCT | この病気と確かめられた後の検査で、大事な部分とされる |
出典:MSD獣医マニュアル『Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)
超音波検査やCTは、お腹の中を画像に写して調べる検査です。ACTH刺激試験は、さきほどの合図のホルモン(ACTH)の名前がついた検査です。
治療には、手術と、副腎のはたらきを抑える薬が使われます。副腎性は、副腎をとる手術が第一の選択肢とされています。下垂体性の治療には薬・手術・放射線の3つがあり、どれも効果には差があると書かれています(MSD獣医マニュアル)。
どの治療にするかは、犬の状態を見ながら、かかりつけの獣医師と相談して決めます。地図を見ながら道を選ぶように、犬の状態を見ながら進め方を決めていきます。
この病気の多くは、薬で治療されます(MSD獣医マニュアル)。薬の治療は続けて行い、そのあいだはACTH刺激試験などの血液の検査で、ホルモンの値を確かめながら進めます(MSD獣医マニュアル)。
どの薬をどのくらい使うか、検査をどのくらいの間隔で受けるかは、かかりつけの獣医師が犬の状態を見て決めます。
医原性かどうかを調べるのにも、ACTH刺激試験が使われます(MSD獣医マニュアル)。
参考:MSD獣医マニュアル『Cushing Disease (Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)リンク
費用の目安として、ある保険会社の白書には、表に入った3犬種の頁に、請求のあった犬の1年間の診療費が載っています。
この病気の年間診療費(白書の3犬種)
| 犬種 | 年間診療費の平均 | 年間診療費の中央値 |
|---|---|---|
| ミニチュア・ダックスフンド | 158,820円 | 142,296円 |
| ヨークシャー・テリア | 205,468円 | 131,220円 |
| マルチーズ | 122,690円 | 71,517円 |
出典:アニコム『家庭どうぶつ白書2025』第2部(2-2-14・2-2-23・2-2-29)

年間診療費は、請求のあった犬の1年間の診療費で、ほかの病気と一緒の請求は除いています。平均と中央値の差が大きい犬種があるので、両方を載せました。
中央値は、低い順に並べたとき、ちょうど真ん中の犬の額です。背の順に並べたときの真ん中の子のように、とても高い額が1つあっても、真ん中の額は変わりません。
窓口で払った総額か、保険で払われた額かは、白書には書かれていません。
保険の補償の範囲と自己負担の計算は、犬のペット保険の補償と自己負担の計算にまとめています。
治る?治療を続けるとどうなる?
MSD獣医マニュアルの下垂体性の頁は、下垂体性の犬の見通しを、全体として良いとしています。生存期間の中央値は、薬の治療をしてもしなくても、約2年と見積もられています。
ただし、病気の早い段階で、ほかの病気をともなわない犬(皮膚の症状だけの犬など)は、薬で治療すると、かなり長く生きられるとする研究があります(MSD獣医マニュアル)。
副腎性(副腎の腫瘍がもとになる型)は別の数字です。片側の副腎をとる手術を受けた犬の生存期間の中央値は、約18か月と書かれています(MSD獣医マニュアル)。型が違うので、上の下垂体性の数字と並べて比べるものではありません。
見通しは犬の状態によって違うので、自分の犬の場合は、かかりつけの獣医師に聞きます。
参考:MSD獣医マニュアル『Cushing Disease (Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism) in Animals』(2024)リンク
家で記録することと病院へ行く目安
水を多く飲む、おしっこが増える、食欲が増える、お腹がふくらむ、ハアハアする、毛が抜ける、皮膚が薄くなる、のどれかに気づいたら、記録を持って動物病院に相談します。
家で書き留めておくことは、次の5つです。
- 水を飲む様子とおしっこの回数(気づいた日付つき)
- 食欲の変化(いつごろから増えたか)
- お腹のふくらみ(横から撮った写真)
- 毛が抜けた場所と皮膚の様子(日付つきの写真)
- ハアハアと息をする場面
毎日の日記をつけるように、日付つきで書き留めておくと、相談のときに役立ちます。
症状は犬によって違うので、原因の判断は獣医師に任せます。
あわせて読む:犬の健康診断は年に何回?頻度の目安と、結果の残し方
家系・血統との関係
純血種と雑種で、この病気と診断された犬の割合に差が見られなかった研究があり、特定の犬種で診断が多かった研究もあります。純血種は同じ犬種どうしから生まれた犬、雑種はいろいろな犬種がまざった犬のことです。
研究2本の対象と結果
| 研究 | 対象 | 分かったこと |
|---|---|---|
| O'Neill ほか 2016(英国) | 英国のかかりつけの動物病院に来た犬210,824頭(2009〜2014年) | この病気と診断されていた割合は0.28%(推定)。ビション・フリーゼは雑種と比べて診断のオッズ比が6.5倍。12歳以上は6.0〜8.9歳と比べて5.7倍 |
| Bellumori ほか 2013(米国) | 米国の大学の動物病院(教育病院)の記録90,004頭(1995〜2010年)。この病気の犬は1,089頭(雑種281・純血種808) | 年齢・性別・体重をそろえて比べると、この病気と診断された犬の割合に、純血種と雑種で差は見られなかった |
出典:O'Neill ほか『J Small Anim Pract』(2016)、Bellumori ほか『J Am Vet Med Assoc』(2013)
オッズ比は、比べる相手と比べて、診断された見込みの違いを何倍かで表す数字です。2本は対象の病院も調べ方も違うので、数字を並べて比べることはできません。米国の研究は大学の病院に来た犬が対象で、一般の犬と割合が違うかもしれないと著者が書いています。
家族に同じ病気の犬がいたかを分かる範囲で残しておくと、相談の場で伝えやすくなります。
あわせて読む:ミックス犬は病気に強い?遺伝病リスクの実際
水を飲む量が増えたら、記録を持ってかかりつけに相談しよう
水を飲む量やおしっこが増えた、食欲が増えた、お腹がふくらんだ、毛が抜けてきた。そんな変化に気づいたら、日付と様子をメモして、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
クッシング症候群かどうかは検査で調べるもので、原因の型や治療の選び方は、獣医師が犬の状態を見て決めます。記録があると、変化を獣医師に伝えやすくなります。
体重は、写真と一緒に 1 回で記録

画面はイメージです(架空の子の見本)。
出典・参考
- O'Neill DG, Scudder C, Faire JM, et al. Epidemiology of hyperadrenocorticism among 210,824 dogs attending primary-care veterinary practices in the UK from 2009 to 2014. J Small Anim Pract. 2016;57(7):365-373. (PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27279104/ ・抄録・確認日 2026-10-23) https://doi.org/10.1111/jsap.12523
- Bellumori TP, Famula TR, Bannasch DL, Belanger JM, Oberbauer AM. Prevalence of inherited disorders among mixed-breed and purebred dogs: 27,254 cases (1995-2010). J Am Vet Med Assoc. 2013;242(11):1549-1555. (PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23683021/ ・Results と Table 2・確認日 2026-10-23) https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/242/11/javma.242.11.1549.xml
- MSD Veterinary Manual「Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals」(Jul 2024) (確認日 2026-10-23・HTTP 200。冒頭の要約・Clinical Findings・Diagnosis・Treatment・Key Points) https://www.msdvetmanual.com/endocrine-system/the-adrenal-glands/cushing-syndrome-hyperadrenocorticism-in-animals
- MSD Veterinary Manual「Cushing Disease (Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism) in Animals」(Sept 2024) 。冒頭・Epidemiology・Clinical Findings・Diagnosis・Treatment and Prognosis(Medical Treatment・Surgery・Prognosis)(確認日 2026-10-24) https://www.msdvetmanual.com/endocrine-system/the-pituitary-gland/cushing-disease-pituitary-dependent-hyperadrenocorticism-in-animals
- MSD Veterinary Manual「Corticosteroids in Animals」(Scott H. Edwards・Last updated May 2025) 。Adverse Effects of Corticosteroids in Animals の段(確認日 2026-10-24) https://www.msdvetmanual.com/pharmacology/inflammation/corticosteroids-in-animals
- アニコム『家庭どうぶつ白書2025』第2部 どうぶつの疾患統計 (確認日 2026-10-23・HTTP 200。印字 p.11(PDF 1 枚目)〔請求割合・オッズ比・年間診療費の定義〕・印字 p.24(PDF 14 枚目)〔2-2-14 ミニチュア・ダックスフンド〕・印字 p.27(PDF 17 枚目)〔2-2-23 ヨークシャー・テリア〕・印字 p.29(PDF 19 枚目)〔2-2-29 マルチーズ〕) https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202512_2.pdf
この記事について
内容確認日: 2026-10-23。一般的な参考情報で、獣医療行為の代わりではありません。
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よむこの記事を書いた人
うちのこ家系図 編集部
編集部の運営者は、実家がブリーダー(犬猫の繁殖)で、出産などの手伝いもしていました。元ペットショップ店長で、2026年9月時点で犬を3頭飼っています。
- 血統書・犬猫の健康・暮らしの手続きを、公的機関や登録団体の資料にあたって書いています。
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